狭苦しくさせている住宅の「南向き信仰」--『思想する住宅』を書いた林望氏(作家・書誌学者)に聞く

狭苦しくさせている住宅の「南向き信仰」--『思想する住宅』を書いた林望氏(作家・書誌学者)に聞く

7度の自宅建築と英国生活を経験した著者が喝破する、これからの賢い家、そして賢い生き方とは。

──なぜ「思想する住宅」なのですか。

住宅と思想が結び付くのは、住宅建築は理科系の問題ではなく、むしろ人文科学系、哲学の問題だと思っているからだ。家には、それぞれの人のそれぞれの住み方がある。家を作るのに大事なのは主体性であり、生き方や人生観が反映する。

モデルハウスやモデルルームと称するものを見ると、LDKやら何やら、コンセプトはどこもまったく同じ。それが購入者の最大公約数だとしても、それで住みやすいのかといったら、そうではない。家を建てる人はそういったものを形から丸のみするのではなく、自分にとって必要なものと不必要なものをよくよく案じ分けて、必要でないものは思い切って捨てる。メリハリをつけることだ。

──そもそも住宅は南向きでなくていいと言っていますね。

「南向き信仰」は、住宅を狭苦しく融通の利かないものにしている。土地が狭いのに家を南北に向けようとするから、くしの歯のような並びになって、結局日は当たらない。家を南向きに並べず、英国の「寄り合い庭」を確保するような考え方にしたら、もっとゆとりのある設計ができる。分譲住宅でも何軒かを集めて、そういう設計にすればいい。

──南向き信仰は根深い。

農家建築の呪縛だ。都市住民になってもなかなか頭が切り替わらない。江戸時代の庶民は、長屋住まいで日当たりは関係ない。その代わり井戸端という寄り合いで、日にも当たりコミュニティを温めた。

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