狭苦しくさせている住宅の「南向き信仰」--『思想する住宅』を書いた林望氏(作家・書誌学者)に聞く
建売住宅も、基礎・骨組みだけ完成のスケルトン販売で買うのは一法だ。すでにマンションではスケルトン販売が出てきている。内装、設備まで整ったものが4500万円で、スケルトンだけなら2500万円、間仕切りや設備、インテリアは残りの2000万円を使って自分で選ぶ。そういう建て売りも今後望まれていくのではないか。
──東日本大震災がありました。
首都圏でも直下型地震が起こるかもしれない。過密な大都市の中で押し合いへし合いしながら住んでいるのがいいのか。交通機関も発達してきたことだから、千葉県の過疎化している地域に広い土地を求めて住むというのもいい。一人ひとりが住宅を研究し尽くして求め、選択していく。まして会社を定年退職してどこに住むかというのなら、これはよくよく考えたほうがいい。
最近は一般の関心が内陸にシフトしているようだ。だが、海抜ゼロメートル地帯は危ないといっても、スーパー堤防のようなものを造って下町を守ってほしいものだ。あの辺には世界の最先端を行く町工場や、さまざまな商業・食文化があり、江戸以来の職人たちも住んでいる。これをダメにしたら、大問題だ。一般の人は住まないにしても、保存地区として残し守っていく価値は十分にある。
──田舎に住むのは?
田舎の土地は不思議なもので、こちらから買いに行くと高い。向こうから買ってくれと言われると、それこそその何分の一かで買える。だから、田舎の土地はこちらから求めない。購入の希望を地元の信頼できる事情通に伝えておいて、向こうから言ってくるのを気長に待つことだ。
──ご自身の山荘についてはいろいろ探されたようですね。
現在は山梨県にある。地元の業者が山の緩斜面に道をつけ開発したところ。ログハウスを建てて15年になる。執筆活動が忙しくなってあまり行けなくなってしまったが。