狭苦しくさせている住宅の「南向き信仰」--『思想する住宅』を書いた林望氏(作家・書誌学者)に聞く
人は、どんなに便利になったとしても、それだけで幸せにはなれないのではないか。そこに自然や人と人とのコミュニティ、いわば便宜性とはある意味で相反することがないと、最終的には幸せになれないのかもしれない。中でも、都市生活者は都市に住んでいることに伴う緊張をほぐすことが必要だ。自然の中に住むのは不便だが、いろいろな動物に遭遇できるし、東京ではなかなか手に入らない薪も、1万円も買うとトラックいっぱいを運んでくれる。友人と語り合いながら、暖炉の火をひねもす眺める楽しみもある。
──山荘で『源氏物語』現代語訳全10巻が完成する……。
膨大な参考資料が必要で山荘では書かない。今7巻を書き終え、来年の今頃には10巻まで終わる。その頃には修理を兼ねて、リフレッシュのために行ければと思っている。
(聞き手・本誌:塚田紀史 撮影:谷川真紀子 =週刊東洋経済2011年10月15日号)
はやし・のぞむ
1949年生まれ。慶応義塾大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授、東京芸術大学助教授を経て、作家活動に専念。専門は日本書誌学、国文学。能楽、料理、自動車、小説、古典、日本語、住まい、生き方、英国など多岐にわたるジャンルでの著書多数。現在、『源氏物語』の現代語訳を手掛ける。
『思想する住宅』 東洋経済新報社 1575円 255ページ
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