宗谷線から日豊線まで、全国「峠越え」鉄路の記憶 勾配とカーブ続く「難所」に挑んだ機関車の力闘
長万部から小樽までの倶知安経由の函館本線は「山線」といわれ、その名の通り4つの峠が存在する。長万部から熱郛駅を過ぎると最初の峠「目名峠」、倶知安から小沢にかけては「倶知安峠」、その先に「苗穂峠」、さらに余市から小樽間は「オタモイ峠」だ。
かつてはこの路線をC62形重連やDD51形重連が牽く急行「ニセコ」や、D51形の牽く貨物列車が豪快に峠に挑んでいた。現在、倶知安を経由して札幌まで北海道新幹線の延伸工事が進んでいるが、その開業時には「山線」も姿を消すことになる。
SLの名所が多かった東北の峠越え
東北地方の峠越えで有名なのが花輪線の「龍ヶ森越え」である。松尾八幡平―赤坂田間の12.2kmは最急勾配が33.3‰もあり、カーブも続く花輪線最大の難所であった。ここを8620形が三重連で驀進する姿は圧巻だった。サミットの龍ヶ森駅は現在「安比高原駅」に名を変え、気動車が急勾配に軽やかなエンジン音を響かせている。
青森県と秋田県の県境を分ける奥羽本線の「矢立峠」は、電化前はD51形が碇ケ関駅から後部補機を従えて三重連で峠に挑んだ。旅客列車はC61形が電化直前まで客車を牽引して峠を往来していたが、1971年8月に秋田―青森間の交流電化が完成。同年9月26日にC61形、D51形の定期運用は終了した。
岩手県釜石線には「仙人峠」が立ちはだかっている。釜石を出た列車は勾配区間に入り釜石鉱山の拠点である標高約255mの陸中大橋を目指す。この駅を出て線路は半径250mのオメガカーブがあり、これは勾配を少しでも緩和するため距離を稼げるようにΩ形に線路を敷いたものだ。陸中大橋―上有住間7.6kmは釜石線最大の難所であった。2023年まで運行していたC58形の牽く「SL銀河」は、この峠越えで迫力ある姿を見せていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら