一方、ヴィンテージマンション(中古になっても価格が落ちにくい名作マンション)は広さや高さに比較的ゆとりがあることから、リノベーションによって豊かな空間が獲得できる。
ただし、給排水設備の老朽化に対する不安などがついてまわる。日本人は新築志向が根深いため、40平方メートル台のコンパクトマンションを買う人は、狭くてもやはり新築がよいと判断しているのかもしれない。
一時的にマンションを所有し、運用していくという発想ならば、中古より新築の方が、リスクが少ないのは間違いない。都心の新築を買い、10年後に高値で売る。マンションではこの形式が最もリスクが少ないからだ。この発想はすでに巷で流布されているとおりだが、その次の10年でメリットを出すのは難しく、それ以降はさらに厳しくなっていく。そもそも最近の新築マンションはリノベーションしようにも、騒音などの理由で水回りの位置変更ができない場合が多く、大幅なプラン変更が現実的ではないのも特徴だ。
自宅がSOHOである必要もなくなった
それでも都心のコンパクトな新築が良いという若い人が増えているのは「できるだけ身軽でいたい」という気持ちが強いからなのかもしれない。
人口が減少し、超高齢化社会に向かう中で、地域におけるコミュニティーの維持は難しくなる一方だ。モノをたくさん持つ必要はもうないし、沢山の部屋も不要。身軽さを追い求める一方で、彼らが譲れないのが都心での生活なのだ。
実際、都心には生活の要素が十二分に揃っている。コンビニエンスストアは冷蔵庫代わりに使えるし、図書館もあれば映画館もある。お客さんが来たときには、近くのホテルに泊まってもらうほうが快適だから、自宅に客間は必要ない。また、ここ数年シェアハウスのような共同生活の新しいスタイルが登場し、働き方においてもコワーキングスペースを利用する人も増加しているから、SOHO(自宅を小規模オフィスとして利用する形態)である必要もないのだ。
思い返せば、2000年ごろに都心部を中心に「狭小住宅ブーム」が起こったが、それ以来、「都市の諸機能を自分の生活の場としながらコンパクトライフを送る」という流れがずっと続いているように思える。
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