「緩慢な衰退」から日本企業が脱却できない深い訳 「大胆な事業再編」を迫られてるのに…真因は?

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逆に、半導体などは変化が目まぐるしく、スピード感のある意思決定、実行ができなければ、変化についていくことは難しい。

かつての日本の大手電機メーカーが半導体事業で苦境に陥ったのは、卓越した技術は持っていたが、そのスピード感についていけなかったのがひとつの要因である。

つまり、事業特性と組織能力、組織カルチャーの「親和性」が低く、「適社性」が担保されていなかったのである。

もちろん、「親和性」が低いから新たな事業にチャレンジするべきではないという話ではない。自社の組織能力や組織カルチャーに縛られてしまっては、成長、発展の芽を摘んでしまう。

大事なのは、市場性や成長性といった「外的要素」だけで事業を選択するのではなく、組織能力や組織カルチャーといった「内的要素」を常に勘案することである。

「適社性」が高く、「親和性」が担保されていればいるほど、成功確率は高まるのである。

「経営主導の事業再編」こそ効率よく進む

日本企業は事業に対する思い入れ、愛着が強い。それは日本企業の強みでもあるが、弱みでもある。

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愛着が強いがゆえに、大胆かつダイナミックな事業の見直し、入れ替えができない

なんとか事業を「延命」させることに尽力するが、抜本的な改善策は見出せず、やがて事業はやせ細り、撤退や売却に追い込まれる。

事業ポートフォリオの見直しは、コーポレート(本社)がなすべき最も重要な仕事のひとつである。事業部まかせにしては、事業再編は進まない。

将来の主力と位置付けられない事業は、競争力や体力のあるうちに、競合他社への売却や統合を進めることが必要不可欠だ。

「低収益事業の放置」は現場力の劣化に大きな影響を与える。

そのため、事業再編は、経営の「意志」をもって進めることが求められているのだ。

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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