もちろん、事業によって「寿命」の長さはまちまちである。
自動車のように100年以上続く事業もあれば、半導体のように目まぐるしい技術革新によって数年で入れ替わる事業もある。
厄介なのは、比較的「長寿」の事業である。
社会インフラを支えるような事業は、すぐになくなることはない。時に「神風」(特需)が吹いて、瞬間的に息を吹き返すこともある。だから、どうしても「延命」しがちである。
経営意志とは「捨てるもの」を決断すること
事業領域をどれほど広げるかは、それぞれの会社ごとに異なる。経営資源が潤沢で、余裕のある企業は、ある程度「戦う土俵」を広げることが可能だ。
一方、「限られた経営資源」しかない企業は、「戦う土俵」を絞り込まざるを得ない。「あれもこれも」と手を出していたのでは、持続的な競争優位を確立するのは困難である。
理屈はシンプルなはずなのに、多くの日本企業は思い切った「戦略シフト」ができていない。
「戦略と集中」を換言すれば、「捨てる」ことである。
「何をやるか」を決めるのではなく、「何はやらないのか」を決めなくてはならない。「捨てる」事業を決めなければ、経営資源が捻出できない。勝てる見込みのない事業を抱えていても、企業価値を高めることはできない。
「戦略シフト」とは「リソースシフト」のことで、大胆に資源配分(人・モノ・金)を変えることこそが「戦略シフト」である。
資源配分の基本は 「傾斜資源配分」だ。どの事業に「傾斜」させるのか。そこに「経営の意志」があらわれる。
日本企業の多くは、中期経営計画の中で「選択と集中」や「戦略シフト」を打ち出していても、大胆な「リソースシフト」を行ってこなかった。それでは事業の入れ替えが進むはずもない。
「成長しない事業」「儲かる見込みのない事業」を放置することは、現場の士気の低下につながる。
低収益で喘いでいるのに、投資もしない、てこ入れもしないで、現場に白兵戦を強いる。そこに経営の意志や合理性はまったくない。
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