ソニーグループもダイナミックな事業の入れ替えで、業績は急速に回復している。祖業の電機を大胆に縮小する一方で、音楽などのエンターテインメント系事業に軸足を移したことが大きな要因だ。
これまでの日本企業は「インダストリアル・インベスター」、つまり事業投資家目線での投資判断を行うのが常であった。
事業部門が事業投資家目線を持ち、投資判断を行うのは当たり前のことだ。そこには事業への愛着もあるだろう。
しかし、全体最適を目指さなければならない本社(コーポレート)が、事業部門と同じ判断基準で事業ポートフォリオを考えていたのでは、戦略シフトは進まない。
いま本社(コーポレート)に求められているのは、「フィナンシャル・インベスター」、つまり財務投資家目線で客観的、冷徹に事業の可能性、要否を判断し、事業の入れ替えを推進することである。
それにより、全社の事業ポートフォリオの適正化が行われるだけでなく、日本の各業界における合従連衡が進み、より強い企業が生まれる可能性は高まる。
「適社性」こそ最も重要な判断軸
事業ポートフォリオの管理をするには、さまざまな観点から各事業の評価を行う必要がある。市場性、成長性、収益性、競合などさまざまな観点から吟味し、「勝てる事業」を選択しなければならない。
その中で最も重要な要素が「適社性」である。
「適社性」とは、選択する事業が自社の持つ組織能力(現場力)や組織カルチャー、さらには経営理念やビジョンとの「親和性」「フィット感」があるかどうかを見極めることである。
それぞれの会社には、それぞれの会社の個性、持ち味(ユニークネス)がある。そうした個性や持ち味を活かし得る事業を選択しなければ、成功はおぼつかない。
一方で、それぞれの事業には固有の事業特性がある。
たとえば、エレクトロニクス分野であっても社会インフラを担うような事業は、比較的スピード感は緩やかだが、じっくりと丁寧につくり込むことが求められる。
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