「緩慢な衰退」から日本企業が脱却できない深い訳 「大胆な事業再編」を迫られてるのに…真因は?

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2009年3月期に7873億円もの最終赤字を計上した日立製作所は、思い切った構造改革を断行し、復活を遂げた。

その過程では、日立金属、日立化成、日立電線(2013年に日立金属と合併)という「御三家」と呼ばれた中核子会社を切り離し、衝撃を与えた。

また、日立国際電気、クラリオンなどの知名度の高い子会社も相次いで売却を決断した。そこには、デジタルを軸とする社会インフラ企業へと生まれ変わるのだという経営の強い意志がある。

デジタルや環境事業という新たな成長を目指すには、祖業やかつての中核事業であっても切り離す。そして、それによって得た資金を、新たな成長分野に投下している。

実際、2020年にスイスの重電大手・ABBの送配電事業を買収し、2021年にはソフトに強いアメリカのグローバルロジックなどを買収している。

こうした思い切った「戦略シフト」が奏功し、送配電や鉄道といった環境インフラ事業の受注残は8兆5000億円(2023年9月末)と、前期末に比べ23%増えている。

このとき打ち出したのが「事業の撤退方針」だ。「売上高営業利益率の目標を8%超に設定し、5%未満の事業は撤退する」と打ち出した。

日本の大企業で日立のように明確な事業撤退方針を公表している会社はまれだ。

「勝つ事業」を選択し、経営資源を集中させる

経営は合理的でなければならない。自分たちの強み・弱み、競争環境における立ち位置を客観的、俯瞰的に捉え、「これなら勝てる」という合理的な戦略シナリオを描く必要がある。

その要諦はシンプルである。それは「選択と集中」である。

「これなら勝てる」という事業を「選択」し、経営資源を「集中」させる。それにより、模倣困難性の高い「勝てる」事業を育てることができる。

未来永劫続く事業など存在しない。かつては「花形」だった事業も、時の移り変わりとともに衰退していく。

過去の栄光にしがみついても、そこから未来は生まれてこない。

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