英国で「税金未納者」をグッと減らした強力な言葉 強制せずに「人を動かす」仕掛けにある特徴4つ
実際に、周囲の力を用いたナッジは多くの分野で効果をあげています。よく見かけるのは「みんな○○してますよ」という情報を与えるナッジです。
納税率を5%上昇させたメッセージ
例えば、BITが行った納税に関する実証実験があります。納税通知書を送る際に、「皆さんは期限内に納税しています」というメッセージを送ると、期限内に納税する人が増えるというものです。
具体的には、メッセージは「①あなたと同じような未納の方も、もうほとんどが納税を済ませました」というものと、「②あなたと同じ町内の人は、もうほとんどが納税を済ませました」の2種類が用意されていました。2つの視点から「あなたと似ている人」の行動を知らせているといえます。
23日後の納税率を見ると、通常の通知メッセージを送った対照群の納税率は33.6%だったのに対し、「①あなたと同じ町内の人は、もうほとんどが納税を済ませました」というメッセージを受けた人の納税率は35.8%、「②あなたと同じような未納の方も、もうほとんどが納税を済ませました」というメッセージを受けた人では36.6%、①と②の両方のメッセージを同時に示したグループでは38.6%となっていました。両方のメッセージを見せると、何も見せないときよりも納税率が5%上昇したのです。
5%と聞くと小さいように感じますが、これは120万ポンドの税収増につながったそうです。
BITの他の実証では、「遺言に慈善事業への寄付を書き加えたいと考えている人は多くいます」という説明を加えておくと、慈善事業に寄付する人の割合が9%から13%に増加したという結果も出ています。「みんながやっているなら自分もやろうかな」と思い、行動にうつすということでしょう。
アメリカの電力会社が行った実験でも、各世帯の電力消費量を知らせる際に、省エネに成功している近隣世帯と比較する形で情報を提供したところ、電力消費量が2~4%減少したという結果が示されています。
身近なところでいうと、前回の記事で紹介した、ホテルに泊まったときの「80%のお客様にタオル・シーツの再利用にご協力いただきました」のようなカードも周囲の力を使ったナッジです。「周囲の人のふるまい」という環境の力は、かなり強力なのです。
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