まずは【最優秀賞】から紹介する。
面接官からアイスブレイク的な質問として「緊張してる?」と聞かれ、緊張のあまり「緊張はしておりません」という短いフレーズを答えるつもりが、思わず2回も噛んでしまったという実際のエピソードがユーモラスに描かれている。緊張している自分を隠すどころか、かえってアピールしてしまった姿に親近感を覚える。
きっと面接はオンラインではなく、対面だったのだろう。それも対面形式での面接はこれが初めてだったのかもしれない。どっと噴き出す汗をハンカチで拭うこともできず、うつむきがちになってしまう作者の姿が目に浮かぶ。
リアルな体験が詠まれ、笑いを誘う秀逸な一句である。就活生なら誰しも経験しそうな緊張感が微笑ましく表現されている。この面接の結果がどうだったのか気になるところだが、次の面接からは少しは緊張から解放された状態で臨めたのだろうか。
お祈りメールからの切り替え方
続いて、【優秀賞】の2作品を紹介しよう。
不採用通知である「お祈りメール」は誰もが欲しくないもの。届くと落ち込む学生がほとんどだろう。ただ、落ち込んでいるだけでは前に進めない。落ち込みながらも気分を紛らわしたり、気持ちを切り替えたりすることが必要だ。
作者が考え出したユニークな対抗策には感心せざるを得ない。お祈りメールを「お祈りを捧げる人」からのメールと捉え、それを「信者」とする発想が極めて面白い。就職活動のつらさをユーモアで乗り越える工夫が伝わり、共感を呼ぶことだろう。
企業からの不採用通知を逆手に取り、心のバランスを保つための独自の方法がユーモラスに描かれていて、つらい現実を笑いに変える力強さが感じられる。ところで、「信者」は最終的に何人集まったのだろうか。少人数で終わったことを願うばかりである。
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