それでも「子連れ出勤」を薦める理由 実践するのは決して簡単ではないけれど・・・

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子連れスタッフのそのような気持ちと折り合いを付ける方策として、同社は今後新しい給与体系を導入する。時給は他のスタッフと同じだが、労働時間のうち2割を「子どもの世話にかかる時間」として差し引く予定だ。

子連れOKで会社が得られるメリットは大

たまたま事情があり、保育園に預けられない1歳の息子を連れてきた熊澤さん。「『別に子どもを連れてきてもいいじゃないか』と思う人が増えるのは、社会にもプラスでは」と話す

給料2割削減は、社内で協議を重ねて「そのほうが、子連れスタッフ本人が気持ちよく働けるなら」と考えられたもので、実際に彼らのパフォーマンスが2割も低いという意味ではないようだ。

むしろ、子連れで働きたいと求人に応募してくるのは、非常に優秀で意欲のある女性たちだという。以前は企業で活躍していたが何らかの事情で退職しており、仕事を再開したくても子どもを保育園に預けられず困っているという女性が、同社の近隣地域には多かったのだ。

西村社長も、人材獲得の面での効果が非常に大きいと感じている。求人広告は出さず、採用は紹介かホームページからの問い合わせのみ。会社の規模が拡大しても人手不足に悩まなくて済んでいるのは、柔軟な働き方の選択肢があるからだという。

初めから女性を活用しようとか、子育てと仕事の両立問題を解決しようと考えていたわけではない。西村社長はじめ、スタッフが子育て世代に差しかかってきたことで、「子連れ出勤もありじゃないか」と自然に発想したという。そして実際にやってみて、それが働きたいのに働けなかった母親たちの問題を解決し、会社にとっても良い結果をもたらすことに気づいた。

「『100社プロジェクト』を始めたのは、会社のPRというより、単純に良い取り組みを広めたいという思いからです。ただうちが『やってます』と言うだけでは発信力が弱いので、プロジェクトという形にしました。子育てしながら仕事をするために子連れ出勤がベストの解決策だというつもりはないですが、ひとつの選択肢として認知されれば、世の中が変わるんじゃないかと。今たくさんの会社が見学に来てくれていますが、その中の数社でも、ぜひ実際に子連れ出勤に踏み出してほしいですね」(西村社長)

取材中も絶えず子どもの声が聞こえてきた。しかし、そこに子どもがいること、周囲の大人たちがちゃんと見守っていることをわかっていれば、特に気になるということはなかった。子連れ出勤の導入に踏み切るためのいちばんのポイントは、関係者全員が「仕事の場に子どもがいたっていいじゃないか」という意識の転換ができるかどうかではないだろうか。子ども同伴での出勤や仕事は決してラクではない。だが、それを補って余りあるリターンがありそうだと、ソウ・エクスペリエンスで働く大人と子どもたちの様子を見て感じた。

やつづか えり フリーランスライター、編集者

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Eri Yatsdsuka

コクヨ、ベネッセコーポレーションに勤務後、2010年にフリーランスに。 2013年に組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブメディア『My Desk and Team』開始。 女性の働き方提案メディア『くらしと仕事』の初代編集長(〜2018年3月)を務め、現在はYahoo!ニュース(個人)他で働き方、組織などをテーマに執筆中。 1児の母。

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