ベビーシッターは雇っていないので、親はもちろんそれ以外のスタッフも共同で子どもの面倒を見る。子連れでないスタッフがその状況をどう受け止めているのかが気になるところだが、今年社内でアンケートをとったところ、ネガティブな評価をしている人はいなかったそうだ。
プロジェクトの担当者は、「幸い子ども嫌いの人がいなくて、だからうまくやれているという面はあると思う」と語る。アンケートにより、「オフィスの雰囲気が明るくなる」「(子どものいないスタッフにとって)将来のための訓練になる」「一緒に働きたいと思うメンバーが働き続けてくれる」など、子連れでないスタッフもメリットを感じていることがわかった。
「私1人ならもっとできる」という葛藤も
オフィス見学会では、「このスペースで、子どもが飽きずに何時間も過ごすのは難しいのでは?」という質問が出た。実際、子どもが彼ら用のエリアを出てオフィス内を走り回ることもある。でも「子どもは走り回るもの」と受け止める雰囲気が醸成できているので、通常それが問題になることはないそうだ(電話でシリアスな話をするときに子どもの声が入ると困るという意見があったが、静かに電話できるエリアを設けることで解決したとのこと)。
時には独身のスタッフが子どもを外に連れ出し、気分転換をさせることもあるという。そんな話からも、みんなが子どもの存在を受け入れて共同で面倒を見ていることが分かる。そこまでの関係性は一朝一夕にできたものではなく、子どもへの接し方についてスタッフ同士が伝え合ったり、子どもが環境に慣れるように親子で努力したりといったことの積み重ねで培ってきたという。
今ではうまく運営している同社だが、常時子連れのスタッフは「子どもが迷惑をかけているのでは」「(子どもに手がかかるので)時給の分も働けていないのではないか」という不安がどうしても拭いきれないようだ。
パートタイムスタッフの望月さんは、2歳の子どもと自転車で30分以上かけて通勤している。1年ほど続けてきた結果、子ども自ら「会社に行きたい」「誰々(会社のスタッフ)に会いたい」と言うほどその生活に慣れてきた。周囲のスタッフが自然に受け止めてくれるのもありがたいと感じている。それでも、「(子ども連れでなく)私ひとりならもっとパフォーマンスを出せるのに」という思いがあるという。
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