ベンツ「質から量」への転換を促したW202の残像 「最善か無か」を感じる最後の世代をいま見直す

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W202は、DTM(ドイツツーリングカー選手権)にも参戦。これは、「190E 2.5-16」の後継としての役割を果たしたことになる。これでスポーツ志向の強い層への訴求も図れた。パワーを求める時代への素早い対応が、市場での足場固めに役だったのだ。

大きなエアロパーツを装着するDTM(ドイツツーリングカー選手権)参戦車両(写真:Mercedes-Benz)
大きなエアロパーツを装着するDTM(ドイツツーリングカー選手権)参戦車両(写真:Mercedes-Benz)

余談だが、190E 2.5-16はすごいクルマだった。コスワース製エンジンと5速MTの走りは実にパワフルであったが、これはまたいつか稿を改めてお伝えしたい。

「最善か無か」を感じられる最後のモデルとして

W202については、書くべきことがじつに豊富にある。ここで述べてきたように、メルセデス・ベンツの過去と未来とをうまく橋渡ししたモデルだったからだ。

いや、“橋渡し”は本来の意図とは違っていたかもしれない。はからずも時代の変化が、メルセデス・ベンツに「質から量」への転換をうながしたともいえるからだ。

現行Cクラスは2021年に登場したW206(写真:Mercedes-Benz)
現行Cクラスは2021年に登場したW206(写真:Mercedes-Benz)

同社が方針転換をしはじめたと感じたのは、1996年の初代「SLK」や、続く1997年の初代「MLクラス(Mクラス)」あたりだ。デザインが派手になり、作りの印象も質実剛健さが薄れたように私には感じられた。

映画『ジュラシックパーク』にはMLクラスが登場していた。このときメルセデス・ベンツは米アラバマの生産工場を稼働させており、イメージアップで北米市場を拡大するのが目的だったのだろう。

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SLKのスーパーチャージャー付きエンジンも、実のところ自然吸気で開発していたものが、意図したほど出力が上がらず、最終的に過給化を選ばざるをえなかった、と私はエンジニアから“告白”されたことがある(正直なところがこの会社の大いなる魅力でもある)。

とまぁ、W202について書いていると、妙に懐古趣味が出てきてしまう。でも、いま乗ってもしっかり走ってくれるだろう。そう思えるほど、W202はいいクルマだった。「最善か無か」のつくりを感じられる最後のモデルとして、いまも魅力は薄れていないと思う。

【写真】W202型Cクラスの写真であの頃を思い出す(26枚)
小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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