五輪で物議「マリー・アントワネット」名言の真偽 「パンがないならお菓子食べれば~」は捏造?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そんな葛藤の末、ルソーはこんな心境に至ったのだという。

「さる高貴な妃(王女)が、『農民にはパンがありません』と言われ、『ブリオッシュを食べればいいわ』と答えたのを思い出した」

ルソーは、 ブリオッシュを食べながら、ワインを飲み始めたのだった。

この「さる高貴な妃」がまさにマリー・アントワネットではないか、と言いたいところだが、彼女が生まれるのはこれから15年後の1755年。

つまり、アントワネットが生まれる以前から、この言い回しは、庶民の苦しみを知らない高貴な者たちへの皮肉として使われていたのである。

アントワネットには、ふだんから彼女に嫉妬する貴族が少なくなかった。また王権に対する勢力も、彼女の悪評をこぞってパリに流したが、そのほとんどがデマや誇張であったことが近年は明らかになってきている。

この有名な言葉も、彼女を悪役にするために語られた、多くのデマの1つと言えるだろう。

国の財政難に陥れた戦犯とされているが…

『ざんねんな偉人伝』(学研プラス)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

フランス革命によって、ルイ16世とともに、断首台に送られることとなったマリー・アントワネット。

国を財政難に陥れた戦犯とさえされているが、いくらアントワネットが権勢をふるったとしても、たった1人でフランス財政が傾くはずがない。ルイ16世の即位前から、国家財政は破綻していた。

また、フランス政府としても飢饉対策を全くしていなかったわけではなかった。ルイ16世は、穀物不足を受けて、ジャガイモの栽培を定着させようとしていた。そのために、パーティのときには、いつも妻のアントワネットの胸にジャガイモの花を着けさせ、彼女自身もジャガイモを愛したと伝えられている。

プチ・トリアノン宮殿が与えられると、子どもたちと遊びながら、飾らない生活を送ったアントワネット。残念な誤解ばかりがなされてきたが、よき母親の一面もあった。

真山 知幸 著述家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は 『偉人メシ伝』 『あの偉人は、人生の壁をどう乗り越えてきたのか』 『日本史の13人の怖いお母さん』『逃げまくった文豪たち 嫌なことがあったら逃げたらいいよ』(実務教育出版)。「東洋経済オンラインアワード2021」でニューウェーブ賞を受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事