五輪で物議「マリー・アントワネット」名言の真偽 「パンがないならお菓子食べれば~」は捏造?

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だが、夫婦仲はそんなによくなかったようだ。結婚当時、ルイ16世が性的不能に陥っていたため、アントワネットは寂しさを紛らわすように、仮面舞踏会で踊り明かしていたという。

王妃に似つかわしくない奔放で享楽的な性格を持っていたアントワネットは、母・マリア・テレジアを大いに悩ませていた。娘をたしなめる母の手紙も多く残っている。

マリー・アントワネットといえば、太陽王・ルイ14世の「朕は国家なり」と同じく、いかにも彼女らしい発言として広く知られている名言がある。フランス革命が起きる前、食糧難に苦しむ民衆に、彼女は不思議そうに、こう言い放ったというのだ。

「パンがないのなら、お菓子を食べればいいじゃない」

フランス語では“Qu'ils mangent de la brioche”。ブリオッシュ(brioche)とは、バターと卵を多く使ったパンのこと。パンの上にまた小さなパンを乗せるというダルマ型で、中世ヨーロッパではお菓子という扱いだった。苦しむ民衆に対してこの言い草は、いかにも浮世離れしたアントワネットらしい、常識知らずの言葉に仕上がっている。

ルソーの『告白』からわかった「真実」

仕上がっている、としたのは、この言葉は捏造である可能性が高いからだ。

言葉の出典は、実はアントワネットではなく、思想家のジャン・ジャック・ルソーである。ルソーの『告白』に、こんな話が紹介されている。

マリー・アントワネット 五輪 ルソー
ジャン・ジャック・ルソー(画像:Universal Images Group/アフロ)

1740年、家庭教師をしていたルソーは、勤め先の家庭からワインを何本か盗んで、自分の家でこっそり飲もうとたくらんでいた。偉人が窃盗ということに驚くかもしれないが、窃盗癖があったことをルソー自身が『告白』に書き残している。

そうして盗んだワインを飲もうとしたのだが、パンがないことに気づいた。ルソーはどうしてもパンと一緒に飲みたかったが、紳士である自分が(紳士はワインを盗まないものだが……)のこのこと買いにいくのは恥ずかしかったし、かといって召使に頼めば、窃盗が発覚してしまうかもしれない。 

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