8月開始「ながら見の動画配信」日本に定着するか 次々流れてくる番組を受動的に見るスタイル

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展開するチャンネルは、8月20日の正式スタート時には10チャンネル。「時代劇チャンネル」はスカパーやケーブルテレビに時代劇を提供する日本映画放送が運営する。「キャンプチャンネル」は、名古屋テレビが制作する人気キャンプ番組「ハピキャン」を軸に運営。JTBが提供する旅チャンネルや、YouTuber事務所UUUMが運営するエンタメチャンネルもある。

チャンネルは番組の権利を持つCP(Contents Provider)がBBMにポンと渡すのではなく、CP側がチャンネルの運営も託されチャンネルキュレーターと呼ばれる。動画配信サービスができるとCP事業者たちが番組を売ろうと動くものだが、この「日本初FAST」は番組を購入してくれるわけではない。

「ペットチャンネル」の画面。下のメニューからYouTubeなどに飛べるのもチャンネルキュレーターのメリットだ(筆者撮影)

パートナーがユーザーを増やし、チャンネルキュレーターが番組を流し、得られた広告収益をBBMも含めた3者でシェアするという、少々複雑だがユニークなビジネスモデルだ。パートナーとしては既存のレオパレスや大阪ガスのほかにも考えられる。

わかりやすいところではケーブルテレビ局が想定できる。契約者と直接つながっているのでTV Stickを勧めやすい。陰り始めた多チャンネルサービスに代わる商材になる可能性がある。TV StickにはFASTとは別に、医療サービスやECなどさまざまなサービスも搭載できるので、ケーブルテレビがユーザーに地域に根ざしたメニューを提供することも可能だ。

日本初のFASTはアメリカのFASTとはまた違う新しいサービスと言える。FASTと言っていいのかとも思うが、アメリカでもFASTの定義は曖昧になりつつあるので気にすることもなさそうだ。

「今さら感」の懸念もありつつも、今後に期待

ユニークなBBMのFASTだが、取材して懸念点も浮かんだ。

FASTは「好みのチャンネルを選べる」ことに価値があり、アメリカのFASTは1サービスに何百ものチャンネルがある。BBMは10チャンネルからのスタートだが、今後どこまで増やせるか。というのは、日本はアメリカと違って配信と放送で著作権が分かれており、また番組流通市場も存在しない。いまだに「放送型」から業界が脱却できていないのだ。そんな中で、チャンネルを増やすのはかなり難しいだろう。

活路として彼らが見いだしたのが、YouTuberだ。若い層を獲得するには、無理にテレビ番組を集めなくても、YouTuberのコンテンツでチャンネルを構成したほうがこの「日本初のFAST」に合うかもしれない。あらゆるジャンルのYouTuberがいるので、チャンネルはどんどん増やせそうだ。

もう一つの懸念は、TV Stickの「今さら感」だ。いま、テレビを買い換えると自動的にスマートテレビを使い始めることになる。テレビにほとんどの配信サービスが内蔵され、1つのリモコンでNetflixからTVerまでボタンを押せば楽しめる。リモコンを持ち替える必要があるTV Stickを日常的に使うかとの疑問がある。

これについて、BBMはすでにテレビメーカーと話を進めておりFireTVにも搭載されるそうなので、時間の問題かもしれない。

懸念点はあるが、私はこの日本初のFASTサービスに期待している。私好みのチャンネルができれば、Netflixに疲れたときに見ると思う。動画配信サービスは、まだまだ広がりがある領域だ。私の生活を楽しませてほしい。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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