トランプ暗殺未遂から聞こえる戦争への足音 「貧すれば鈍する」民主主義を破壊するもの

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現在われわれ民主主義世界と称している世界を覆っているのは、未曾有の経済的衰退である。ラスキの言葉が正しければ、われわれの世界は、徐々に民主主義的世界から遠ざかり、権力者の意のままになりつつあるということである。

われわれの世界の統治者が、このことに気づいているとすれば、今は民主主義という言葉遊びにふけるよりも、やるべきことは、個々人の生活の向上なのである。

経済的改善への無為無策こそ脅威

しかし、リーマンショック以後、経済状況は一向に改善されていない。新しい経済発展の方向が定まらなければ、道は2つしかないとラスキは述べる。

「ひとつは国内抑圧、他は戦争である」(前掲書、22ページ)

 

現在がそうした状況だと考えたくはないが、為政者が生活に困窮する人々を前にして、経済的改善に対して無為無策に陥り、ひたすら戦争への道を進んでいるのだとすれば、この不気味な予想は当たっているのかもしれない。

気になるのは、民主主義と全体主義との戦いだといって、ひたすら戦争の継続のみを主張している民主主義諸国の統治者のことである。守るべきは、民主主義なのではなく、人々の命と安定した生活であることを忘れるべきではない。

そして、残念なことだが、1929年の大恐慌という経済的困難を克服させたものは、さまざまな経済政策ではなく、あの不幸な第2次世界大戦だったのだということを、思いだすべきかもしれない。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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