コンスタンは、代議制についてこう述べている。
「代表制とは、国民が自分ではできない、もしくはやりたがらないことを誰かにまかせるための組織にほかなりません」(前掲書、47ページ)
国家権力に積極的に参加することを誰かに委託するという点では、全体主義もある意味それと同じである。ただ民主主義は、その委託を自由に変えることができる点で優れている。
しかし、委託していることで、いつのまにか国家の意のままになり、自らの私的生活の安寧までも犯してしまうことになる点には注意しなければならないのである。
私的な生活での経済的幸福
そうならないためには、政治にも関心を持てるだけの、私的な生活である経済的幸福が実現されておかねばならない。そうでなければ、朝から晩まで生活のために明け暮れ、政治への参加など保証されないからである。
「貧すれば鈍する」という言葉がある。民主主義を維持するには、市民は貧しくあってはならないのである。民主主義は国民全体の経済的幸福を実現しなければ、その存在も危ういものになるということである。
第2次世界大戦を経験してきた、イギリスの政治学者ハロルド・ラスキ(1893~1950年)は、こう述べている。
「これに反して、自由が危殆に瀕するのは一社会の経済が縮小し始めるときである。経済の収縮は常に恐怖であり、恐怖は常に支配者が自由に対して嫌悪を向けるのはまさにかかるときである」(『近代国家における自由』飯坂良明訳、岩波文庫、1974年、11ページ)
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