"空の巣症候群"を救った98万円温泉付マンション 子育て卒業直近の小説家が伊豆で二拠点生活
我が家のメンズはそれぞれ独立した生活を営んでおり、家族のトークルームや週に一度の進捗会議によって問題なく、いやむしろ私がそのような2拠点生活を始めてからのほうが共同体としてのチームワークが円滑になった。私が帰宅することがひとつのイベントになることによって、家族がそろった週末に近場でランチにいくことが楽しみになった。
私を癒やす小さな巣
子育ても家事もない小さな部屋で暮らし始めたら、自分でもびっくりするぐらい生活が変わった。まず一日が長いし、ちょっと仕事で嫌なことがあった時も「温泉はいるか」「海見ながらワイン飲むか」と切り替えができる。
伊豆の秘密基地で温泉につかったり海をぼーっと見ていると、不思議なくらいいろんなことがどうでもよくなってメンタルに効く。そんな私の秘密基地を息子は気に入っていて、休みのたびに青春十八きっぷで7時間かけてやってくるようになった。
パートナーのほうはおいしい魚介にめろめろになってしまい、田舎暮らしなんてとんでもないと言い張る田舎出身者だったのが、「こういう暮らしもあり」とまでころりと宗旨替えした。理由は海と水その日の朝とれた魚である。人間は口にするものを変えるだけでこんなにも意識が切り替わるのだと実感した。
あと2年もしないうちに息子は巣立っていくだろう。彼が飛び立つ巣は、アラフォーの私にとってもまた巣であったのだ。巣は小さくても大きくてもよい。
今、私は私一人をとにかく癒やす小さな巣を手に入れた。そこへたくさんの友人たちを迎え入れ、空の巣なんてとんでもない、かえってにぎわいの巣症候群におちいりつつある。みんな私の温泉、すてきでしょ? と自慢しながらつつく金目鯛のしゃぶしゃぶは最高だ。今度の巣で、私は私を育て、もっと自分を知ることで癒やすのだ。
小説家。漫画の原作や脚本なども担う。2000年、『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞。2013年、『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。2024年4月には同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』を刊行し、話題に。
文/高殿円 編集:小沢あや(ピース株式会社)
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