田舎暮らしをスローライフと勘違いする人の悲劇 夢から醒めた後に本当の喜びが感じられる
コロナ禍でリモートワークが増え、昨今は空前の地方移住ブーム。地方移住や2地域居住に関心のある人の割合は、コロナ禍前の9.2%から12.9%まで上昇(「国土交通白書2021」より)。移住支援制度を用意する自治体も増えています。
しかし、田舎暮らしを「自然の中でゆったり暮らせるスローライフ」と勘違いし、憧れだけで移住してしまうのはとても危険。『都会を出て田舎で0円生活はじめました』の著者で、青森で自給自足の生活を送る田村余一さん・ゆにさん夫妻が、田舎暮らしのリアルを語ります。
充実した田舎暮らし。でも、現実は……?
僕、田村余一は、嫁さんと息子の3人家族。青森県の自然豊かな田舎で暮らしています。家は廃材を使ってセルフビルドした木造平屋。電気・ガス・水道は契約せず、家庭菜園で育てた野菜や敷地内で採ってきた山菜キノコが我が家のごちそう。お金にはほとんど頼らない、自給自足の生活です。
そんな僕にも、社会で働いていた時期が少しあります。スーツも着たし作業着も着ました。でも、どの仕事も心からやりたいとは思えなくて、ストレス発散のためにお酒を飲んだり衝動買いをしたりしては、金欠になってまたがむしゃらに働く……という悪循環。もともと環境問題に関心があったこともあり、「僕がいなかったら、この先食べるかもしれなかった鶏や豚や牛は助かるし、生活ゴミも減らせるかな…」なんて考えていた20代でした。
そこから紆余曲折を経て徐々に自給自足生活へ。最初は一人でしたが、嫁さんが来てくれ、息子が生まれ、今の田村家があります。
毎日「生きてるなぁ」と実感できる充実したこの暮らしを、かつての僕のように都会で心をすり減らしながら生きている人たちに選択肢のひとつとして提案したい。そんな想いで、田舎暮らしを体験できるワークショップや講座を開催したときもあったのですが、そこで参加者の方々が直面するのが「理想とのギャップ」。田舎暮らしに夢を抱いて参加してくれたものの、現実を知って「やっぱり無理そう!」となる人、実はすごく多いんです。