田舎暮らしをスローライフと勘違いする人の悲劇 夢から醒めた後に本当の喜びが感じられる
僕のワークショップに来てくれる人は、8〜9割が「田舎暮らしってなんとなく憧れる」「どんな感じか体験してみたい」という層。実際にどういう生活をするのかはよく知らない人がほとんどです。
僕たちの暮らしは、決して「スローライフ」とは言えません。畑を管理したり、掃除したり、太陽の位置に合わせてソーラーパネルの向きをちょこちょこ変えたり……とやること山積み。
映画などでは簡単そうに見える薪割りも、実際の斧は重いし、扱いを間違えると大怪我をするし、いきなりできるものではありません。便利家電があればボタンひとつで済むことも、ボタンの奥にある工程を自分たちの手で1つひとつ作業していくのが田舎暮らしです。
住む場所によってもいろんな苦労があります。僕たちが住んでいる地域には学校も病院もありますが、本当の山奥だと不便すぎて大変。となり近所に一般的な農家さんの畑があると、シーズン中は農薬が家の窓について取れない、なんてことも。当然ながら虫や動物もいっぱい出ます。
そう伝えると、みなさんの表情がだんだん曇ってきます。「そんなことまでやるの?」「大変そう」とザワザワ……。でも、夢を見ている人を夢から醒ますのも僕の役割。家も仕事も手放して移住してしまってから後悔するより、事前に現実を知って判断してもらったほうがいいので、包み隠さず説明しています。
メリットだってたくさんある!
大変な面ばかり紹介してしまいましたが、もちろんメリットもたくさんありますよ。田舎暮らしは自然を相手にすることが多いですが、人と接するときのように言葉を介する必要がない分、気を使ったり相手の言葉に傷ついたりすることがありません。
子育てのしやすさも抜群。いつもそばで成長を見守れるし、隣家とは距離があるので迷惑をかけないか心配する必要もなし。僕が作業しているときも、ひとりで蟻の行列を眺めたり、木と金槌と釘でトントン遊んだり、自然の中で飽きずに楽しんでくれるので助かります。
なにより、日々の大変なこと1つひとつを自分の手でクリアしていく、そのこと自体が「生きてるなぁ」という感覚と喜びをもたらしてくれています。