田舎暮らしをスローライフと勘違いする人の悲劇 夢から醒めた後に本当の喜びが感じられる
ただ、移住を決める前は、通えるだけ現地に通うことをおすすめします。家族で住むなら家族全員で。その地域の環境や人柄をリサーチして、デメリットもきちんと聞いて、できれば移住後もサポートしてくれる地元の人を見つけてください。田舎暮らしをしている人は、SNSで情報発信や仲間募集をしていることが多いので、そこからあたってみるのもいいですね。
田舎で暮らすための最低限の技術やノウハウも必要です。「この古民家いいな」と思って購入したら、床下がボロボロだったり、冬がものすごく寒かったり……ということはよくあります。自分で修繕できなければ業者さんにお願いすることになり、実際に暮らし始める前に貯金が飛んでいくケースも。
あとは、「田舎に行けばなんとかなる」という幻想も危険。都会ならではの息苦しさはないかもしれませんが、代わりに「自活力」や「自給力」を養わなければいけません。自分で情報を見つけたり、自分で対処したり、自分で人脈を築いたりする意気込みがないと厳しいです。たとえばコミュニケーション力を活かして地域の人と人をつないでビジネスをつくるなど、都会で培ったものを活かすつもりで来ることが大切です。
田舎暮らしに向いているなと思うのは、困難を克服する喜びを感じられる人。都会ではお金で解決できる日々の困難も、田舎では自分で解決しなければいけません。僕はもともと、難しいことや苦手なことから逃げないように生きてきました。以前やっていたデザインの仕事も「業者さんに頼むより自分でやっちゃおう」と独学で始めたのがきっかけだし、今やっている御用聞き屋の仕事も「誰もやらないなら僕がやろう」と始めたもの。
できなかったことができるようになったときの、「自分のOSが10.0から13.0にアップデートした」みたいな快感がたまらない! これに共感する人は、田舎暮らしの魅力を存分に味わえるタイプだと思います。
妻から見た田舎暮らしのリアル
私、田村ゆには、田村余一の妻として田舎で暮らし始めて6年目。札幌で生まれ育ち、高校卒業後は東京で暮らしていた都会っ子ですが、着物と出会ったことで価値観がガラッと変わり、日本古来の文化や自然に興味を抱くように。いつしか、自分の暮らしも自然に近いものへ変えていきたいと思うようになりました。
だから今の田舎暮らしは私の理想。「スローライフ」や「リゾート」のイメージとはまったく違い、常に手足を動かして作業しているような毎日。青森は冬が厳しいので、暖かい時期に野菜を作っておいたり、薪を用意しておいたり、年間で計画を立てて行動しないと命の危険も生じる暮らしです。でも、そういう生活がしたくて来たので、とても充実しています。
「ずっと同じような暮らしで飽きない?」と聞かれることもありますが、とんでもない! 住んでいる場所は同じですが、気候も周辺環境も育てる野菜も毎年変わります。子どもも日々成長します。その中でいろんなことに挑戦していく過程が楽しくてしかたないんです。夫が言っていた「困難を克服する喜びを感じられる人が向いている」というのは、まさにその通りだと思います。
実際にやってみないとわからないことが多いのが田舎暮らし。興味があるならお試しで暮らしてみるのもアリだと思います。理想の暮らしをしている人を見つけて、実際に話を聞いてみたり、生活を真似してみたりするのもおすすめ。移住後のイメージが湧くし、困ったときに助けてくれる存在になるかもしれません。
いきなり山奥に住むなどの無理はせず、ダメだったら都会に戻れる選択肢もきちんと残しながら、リアルな田舎暮らしをぜひ体感してみてほしいなと思います。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら