日産前社長が語る、リーダー・ゴーンとその変節 イエスマンに囲まれて現場から乖離していった

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『わたしと日産』著者の西川廣人氏
[著者プロフィル]西川廣人(さいかわ・ひろと)/日産自動車前社長。1953年生まれ。77年東京大学経済学部卒業、日産自動車入社。米国・欧州駐在、ルノー日産共同購買会社などを経て2005年日産副社長、17年4月社長兼CEO。19年9月に社長兼CEOを、20年2月に取締役を退任。現在はベンチャー企業数社の顧問として活動。(撮影:尾形文繁)
経営危機の日産自動車を立て直し、仏ルノー、三菱自動車を加えたアライアンスを率いていたカルロス・ゴーン氏。現役の国際的なカリスマ経営者が逮捕される事件が起きたとき、著者は日産の社長だった。若き日の仕事のやり方やゴーン氏が来てからの日産の変わりようなども描くが、読者がいちばん気になるのは事件の真相だろう。事件の渦中にいた著者が見た真実とは──。
わたしと日産 巨大自動車産業の光と影
『わたしと日産 巨大自動車産業の光と影』(西川廣人 著/講談社/1980円/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──なぜ、このタイミングで本を出されたのでしょうか。

2019年に社長を辞めて、20年2月の臨時株主総会で取締役からも降りた。直後は退任前後のゴタゴタの体験が生々しく、俯瞰することが難しかったが、私の経験をまとめて伝えたほうがいいかな、という気持ちを持っていた。その後、若いベンチャーと仕事をするようになった。4年くらい経った頃から日産の経験をある程度の距離を持って振り返れるようになり、まとめてみようか、と思った。

──ゴーン氏とのやり取りが詳細に描かれています。日記をつけていたのですか。

先に進むほうが好きなタイプなので日記はつけていない。本書は記憶を基に印象に残っていることを書き出していった。そのうえで、フランスのマクロン大臣(当時)に会った時期など、客観的事実は編集者に確認してもらった。原稿にまとめて編集者に見せ、「こういうことはないですか。ああいうことはないですか」と言われて書き足したものもある。

非常に優れたリーダーだが知らない一面も

──西川さんにとってゴーン氏はどういう存在でしょう。

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