「コミュニケーションの原点」とは何かに立ち返る 『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』書評

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『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』今井むつみ 著
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策(今井むつみ 著/日経BP/1870円/304ページ)
[著者プロフィル](いまい・むつみ)/慶応大学環境情報学部教授。1994年米ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。

認知科学、心理学の視点でコミュニケーションをめぐる謎を探究し、その成果を基に解決策を説く。「話せばわかる」とはいかない現実の不思議、横たわる大きな溝を、平易な言葉で解き明かす。

「伝える」技術を科学的に解説

まず、人が「何をどう聞き逃し、都合よく解釈し、誤解し、忘れるのか」を知ることの重要さを示し、そのうえで「そうした特徴を持つ人間同士が、それでも伝え合う」にはどうすべきか、心の持ち方や思考法が指南される。公平を心がけても必ず生まれる視点の偏り、専門性が視野を歪ませる皮肉、書き換えられてしまう記憶の曖昧さ。日常的に人々が実感する齟齬(そご)が科学者の手で浮き彫りにされる。

中盤からは、「伝わる」を実現する技術について、ビジネス現場や日常生活の場面を例として実践的に助言する。「相手の立場に立つ」「相手の感情に寄り添う」といったビジネス書の常套句も、心の科学として解説されると一味違う。

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