書籍や雑誌の制作を陰で支えているのがライターという職業だ。例えばインタビュー記事。専門用語の多い話にもうなずきながら理解を示し、的確な質問で流れをコントロールする。会話を文字に起こし、余分を刈り込み、論旨を整理し、発せられなかった言葉を補って形を整える。文脈を読み、話者の趣意をつかむ技術が求められる、端的に言えば「わかる」力が高い人たちだと思っていた。
「わかる」という言葉への違和感
ところが1992年生まれのライター・編集者の著者は、初のエッセー集となる本書を「わかる」という言葉への違和感から語り始める。
「誰かのことを『わかる』と思う」とき、「痛みや悲しみが、自分の中へ流れ込んでくるように感じる」。ここでの「わかる」は「共感」と言い換えられる。それは身体的な反応のようにままならないもの、「する」ものではなく「してしまう」ものだ。
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