佐治敬三と開高健、深い友情が2人を支えた 支える人間がいることで「最強」になれる

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──二人の文中でのバランスも大変だったのでは。

苦労した。途中で一人にするかとさえ思った。開高のエピソードは山ほどある。佐治について社史や自伝はうそをつく。今までは関係者ばかりが佐治を書いている。歯を食い縛って、佐治の伝記は極力使わないことにした。外部の人が書いたものや新たな取材を参考にした。たとえば佐治姓はどこから来たのか。実に書いてあるものはない。むしろ今回は外部の人間が書いたから信憑性がある。マイナスのことまで書いたことで、読者の心に刺さる。

──開高さんについては女性問題が詳しい。

佐治は、艶福家だった父親に対してのアンチテーゼなのか、調べてもまったく女性問題が出てこない。母親に対する愛情はことさらで、けい子夫人一筋の愛妻家でもあった。

支える人間がいることで最強になれる

──女性読者も多いとも。

けっこう読まれている。こんなごっつい男たち、今の時代にいないという反応だ。人物のスケールにあこがれがあるようだ。

──合わせ鏡の友人関係も今は珍しいのでは。

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今の日本人、特に若者は「個」で何かしようとしがちだ。だが、個で、つまり一人では最強になれない。支える人間がいることで最強になれる。しかも、強くなっていけるのは個ではない。火花を散らすこと、ぶつかること、支え合うことによって共に強くなる。友情を温めながら一緒に切磋琢磨してやっていくことだ。

37年前の講演から始まった開高との私の縁。この本はウイスキーなら37年ものだ。最初の講演の結びもたしか、友人を持てだったと思う。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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