大統領にこれを実行する政治的・法的能力があるかどうかは不明だ。もしそれが実現すれば、アメリカの金融政策に対する信頼は大きく低下し、金融市場のボラティリティはさらに高まるだろう。
副大統領候補のJ・D・バンスや前USTR(アメリカ通商代表部)代表のロバート・ライトハイザーなど、ドル安を推進する人物もいる。ライトハイザーは現在、トランプ派のアメリカファースト政策研究所の通商部長を務めている。もちろん、前述したように、トランプの財政・金融政策は実際にドル高をもたらすだろう。
それでもこれらのアドバイザーは、他国が自国通貨高に失敗した場合の「報復」関税を提唱している。1974年通商法第122条は、対米貿易黒字が「大規模かつ深刻」な国に対して最大15%の関税を課すことを認めている。
「より悪い」ものが何かを見ることになる
トランプ1期目の際、ライトハイザーとピーター・ナバロ通商顧問によるこの方向への取り組みは、スティーブン・ムニューシン財務長官やゲーリー・コーン前国家経済会議委員長といったウォール街とつながりのある高官によって阻止された。トランプ2期目には、そのような人物は少なくなるかもしれない。
安倍晋三元首相がトランプと行った2回の首脳会談は、ワシントンではなくトランプの別荘であるマー・ア・ラゴで行われた。日本政府はこの費用を負担せずに済んだが、これによってトランプは費用のほとんどをアメリカの納税者に払わせることになった。
しかし、これらの会談でも、トランプが鉄鋼関税の対象に日本を含めることを止めることはできなかった。当時、日本の政府関係者はより悪い事態は避けられたとして、これを「勝利」と呼んだ。もしトランプ2期目があれば、日本政府は「より悪い」ことがどのようなものかを見ることになるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら