データを意図的に悪用して解釈を歪める4つの例 グラフ作成者の意図にハマらない判断力を磨く

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たとえば、ある株価のデータを折れ線グラフで表現すると、トレンドや季節性などの時間に関する洞察を得ることができます。この折れ線グラフのデータを、どの期間で切り取ってグラフ化するかによっても見る人の印象を大きく変えることができるのです。34年にわたって最高値を更新することのできなかった日経平均が2024年2月にバブル期の史上最高値を更新して盛り上がる日本の株式市場のデータを例に、データの期間による解釈のポイントを解説します。

日経平均株価のデータの折れ線グラフ
日経平均株価のデータの折れ線グラフ

図表左の折れ線グラフは、2012年からの日経平均株価の年別推移を示したものです。2011年3月11日に発生した東日本大震災からの復興の中で、安倍晋三元総理が「アベノミクス」を打ち出し、コロナショックを経ながらも株価が伸びている様子が見て取れます。このグラフだけを見た人は、「株価は右肩上がりで上がるものであり必ず儲かるものである」と解釈してもおかしくないでしょう。

一方で、同じデータの期間をバブル期の1990年からに広げて作成した右の折れ線グラフを見ると全く違った解釈ができるのではないでしょうか。1990年の年始に3万8921円の高値をつけて以降、長年株価は低迷し、最高値を更新するまでに34年もの時間を要しています。このグラフを見た人は、「株価は長い間下落することもあり、損する可能性も高いものである」と解釈するかもしれません。このように、全く同じデータでも、グラフの作り方やデータの期間によって、異なった解釈を伝えることができるのです。

スケールの選択によって印象が変わる

もう1つ、データを可視化する際には、スケールの選択にも注意が必要です。不適切なスケールを選択することで、データの傾向や関係性が歪められ、誤解を招く可能性があるのです。たとえば、棒グラフのスケールを0から開始することなく、途中から開始することで変化の大きさを意図的に強調した例が以下のようなパターンです。

年齢別平均身長データの棒グラフ化
年齢別平均身長データの棒グラフ

年齢別平均身長データから、中学1年生の12歳~高校3年生の17歳までの身長データを2種類の棒グラフで可視化してみました。左側は、スケールを身長0cmから開始したグラフとなっています。このグラフで見ると中学生から高校生の期間において、身長の伸びはあまり大きくないように解釈できるのではないでしょうか。

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