社会課題に取り組む「やったふり」からの脱却方法 経済価値と社会価値の両立を目指すことは可能

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Step③および④まで到達しているケースとして、株式会社マザーハウスを取り上げたい。

マザーハウスは途上国から世界に通用するファッションブランドを生み出すことを目指し、立ち上げられたブランドである。アジアの途上国6カ国でバッグ・ジェリーを製造し、国内外の多くの店舗で販売している。

代表取締役副社長の山崎大祐氏は事業成長を支える背景の一つとして、経営トップ自らが社会的価値と経済的価値の両方が重要であることを語る点であると指摘する。例えば同社がバッグの製造を行うバングラデシュの人が望んでいることはオーダーを継続することであり、オーダーの継続が雇用の創出を支えて貧困の課題解決というインパクト創出に繋がると説明する。

また、山崎氏は市場を捉える際にマイノリティの視点を取り入れることが結果的に市場の真のニーズを捉え、経済的価値を生む点も重要であると指摘する。例えばマザーハウスはブラインドサッカー協会とパックパック等を共同開発し、上市している。視覚障がいの者の視点に徹底的に寄り添って作られたプロダクトは結果的にデザイン、使いやすさが一般の消費者にも高く評価され、同社のラインナップの中でも高い売り上げを上げている。

加えて、山崎氏は創業以来18年にわたり、同社が各メディアに取り上げられ、取り組みを発信している点について、マイノリティに光を当てたい思いを発信することで、自社の思いやストーリーを従業員や顧客に共有し、それぞれがプロダクトに込められた「物語」を語ることで、インパクトの増幅や社会の変容に繋がるとしている。

投資の時間軸は経営者の価値基準による判断

以上、四つのステップを通じて企業が「やったふり」を脱し、経済価値と社会価値を両立して、インパクトを創出するための方法論について紹介した。
最後に「やったふり」を脱し、インパクト経営に転換するためには学習効果や社会の価値観変容を含む時間軸を要す内容が含まれており、事業成長に要する時間軸は自社の外部要因に起因する点も大きいと言える。そのため、この時間軸を織り込んだ経営判断については、自社がインパクト創出にどのように関わっていくのか、経営者としてのスタンスを内外に示しつつ、まずは両立モデルの具体ケースを作ることが「やったふり」脱却に向けた一歩となる。

(出所)
・株式会社丸井グループ共創投資部 武藤夏子氏
・株式会社マザーハウス代表取締役副社長 山崎大祐氏
インタビュー
佐藤 一誠 野村総合研究所シニアコンサルタント
徳重 剛 野村総合研究所プリンシパル
西岡 裕紀 野村総合研究所シニアコンサルタント
江口 耕三 鎌倉投信・創発の莟ファンド運用責任者
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