企業価値を50年間「略奪」してきた「真犯人」は誰か 「イノベーション衰退」「極端な所得格差」の要因
株式市場は価値抽出の制度である
一般に、株式市場の機能は、企業に資金を供給することだとされている。しかし、アメリカをはじめとする一部の先進国では、企業による株式市場(を通じた株主)への資金供給が、株式市場による企業への資金供給を上回っている。
こうした企業による株主還元の最も有力な手段が、自社株買いである。『略奪される企業価値』の著者、ラゾニックとシンによれば、2018年1月時点でアメリカのS&P500種指数を構成する企業のうち、2008年から2017年まで10年にわたって上場していた466社は、純利益の52.6パーセントに相当する額を自社株買いに、40.6パーセントに相当する額を配当に費やした。
ラゾニックとシンは、強大な力を有する金融関係者が、自社株買いや配当といった株主への分配を通じて、価値創造プロセスに対する自らの貢献度をはるかに上回る価値を企業から抽出するプロセスを(本書の原題でもある)「略奪的価値抽出(Predatory Value Extraction)」と呼んでいる。
2人は、こうした価値創造と価値抽出の極端な不均衡が、アメリカのイノベーションを衰退させ、安定的かつ公平な経済成長を妨げ、ひいては現在の極端な所得格差を招いていると断言する。
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