スパイスにはリスクが伴う
ヨーロッパで最も珍重されてきたスパイス(黒こしょう、クローブ、シナモン、ナツメグ)は、かつては、「東インド」と呼ばれた地域、つまり南アジア(特にスリランカとインド南部)と東南アジア(特にインドネシア)でしか栽培されていなかった。
ヨーロッパからアジアへの航路が開拓されたのは、ヨーロッパ人がスパイスを手に入れようとしたからであることはよく知られている。あまり知られていないのは、株式会社または有限責任会社という、資本主義の発展のいちばんの原動力になったものの誕生にも、スパイスが関わっているということだ。
当初、「東インド」とのスパイス貿易はきわめてリスクが大きかった。帆船で海をふたつ、あるいは3つ(大西洋、インド洋、それにインドネシアまで行く場合には太平洋)を越えていくというのは、いくらか誇張していえば、火星に探査機を送る─そしてぶじに回収する─のと同じぐらいたいへんだった。



















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