多くの国で食べられている鶏肉は、機内食で出されることも多い。1980年代末、ソ連(当時)の航空会社アエロフロートでも鶏肉が出されていたという。その時代のアエロフロートで出されていた機内食をめぐって、興味深いエピソードがある。
ベストセラー『世界経済を破綻させる23の嘘』などの著書がある経済学者のハジュン・チャン氏の最新刊『経済学レシピ:食いしん坊経済学者がオクラを食べながら資本主義と自由を考えた』から、「機内食の鶏肉をめぐるやり取りから考える『平等と不公平』」について一部抜粋・編集のうえお届けする。
平等なのか不公平なのか
1980年代末、ケンブリッジの大学院生時代、友人のひとりに、いつもアエロフロートを使ってモスクワ経由で帰国しているインド人がいた。
アエロフロートはおよそ考えられる限りどんな面でも(乗り心地でも、運航でも、客室乗務員の態度でも)最悪だったようだが、チケットの値段は他社より格段に安かったので、インド人学生の多くは辛抱強くそれに耐えていた。
その友人によれば、機内食で出てくるのは、気味が悪いぐらい真っ白で、鳥肌が立つほど味のない鶏肉ばかりだったという。あるとき、ほかのインド人の乗客が客室乗務員に鶏肉以外の食べ物はないかと尋ねているのが聞こえてきた。どうやらベジタリアンらしかった。
乗務員の返事はにべもなかった。
「いいえ、ございません。アエロフロートにご搭乗されるかたは全員平等です。当機は社会主義の旅客機です。どなたさまも特別扱い致しません」
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