「スイスは時計とチョコしか作れない」の大誤解 日本人が知らない「スイスの製造業の正体」

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アルプスとスイスの風景
「日本人が知らないスイスの製造業の実態」をご紹介します(写真:guni/PIXTA)
スイスという国についてどんなイメージをお持ちだろうか。永世中立国で富裕層向けの金融や観光業などが中心だと思っている人が多いのではないだろうか。そしてスイスの製造業といえば、せいぜい「高級時計」と「高級チョコレート」くらいしか思い浮かばない人もいるだろう。しかし、それは本当のスイスの姿なのだろうか。
ベストセラー『世界経済を破綻させる23の嘘』などの著書がある経済学者のハジュン・チャン氏の最新刊『経済学レシピ:食いしん坊経済学者がオクラを食べながら資本主義と自由を考えた』から、「日本人が知らないスイスの製造業の実態」について一部抜粋・編集のうえお届けする。

チョコレート大国スイスの正体

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多くの人から、スイスで生産されているのは高級チョコレートだけ、そのほかにはせいぜい、超高級腕時計(新興財閥の創業者か、銀行家か、スポーツのスター選手くらいしか買えない腕時計)があるだけだと思われている。ものをほとんど作らず、もっぱらサービス業で生きている国というのが、世界に広まっているスイスのイメージだ。

これは悪くいえば、スイスは第三世界の独裁者から預かったブラックマネーを秘密の口座で管理し、鳩時計とカウベルのような安っぽい土産物(最近はきっとそれもすべて中国製だろう)をお人好しの米国人や日本人の観光客に売ることで生計を立てている国ということになる。

よくいえば(こちらのほうがいわれることが多いが)、製造業ではなく金融や高級志向の観光といったサービス業で繁栄するスイスは、脱工業化経済のお手本ということになる。

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