「こしょう」への欲望が生んだ「株式会社の発明」 資本主義の最も重要な手法の1つだが副作用も

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この指摘そのものは正しいが、有限責任で大事なのは、無限責任の場合よりもはるかに大規模な資金動員が可能になるという点だ。だから資本主義の宿敵カール・マルクスも、有限責任会社を「最高度の発展を遂げた資本主義的生産の形態」と称えたのだ。もちろんその賛辞の裏には、資本主義の発展が早まれば、それだけ社会主義の実現も早まるという思惑があったわけだが(マルクスの理論では、資本主義が十分に発展してはじめて社会主義は到来するとされている)。

19世紀半ば、マルクスの共産党宣言が発表されてからほどなく、大規模な投資を必要とする重化学工業(鉄鋼、機械、工業化学、製薬など)の勃興によって有限責任の必要性はさらに増した。もはやケースバイケースで有限責任の認可を与えるのではすまなくなった。遠隔地との貿易や植民地事業だけでなく、基幹産業のほとんどが大規模な資金調達を必要としていたからだ。

その結果、19世紀末には、大半の国で有限責任が特権ではなく、権利(いくつかの最低限の基準を満たせばいい)になった。以後、資本主義は有限責任会社(または株式会社)を主な原動力として発展を続けてきた。

進みすぎた金融化

しかしこの経済の進歩の大きな原動力になってきたものが、近年、その妨げになっている。過去20~30年の金融の自由化により、多様な金融商品が登場した結果、株主たちはもはや法律上自分が所有している企業と長期的に関わろうとしなくなった。

例えば、英国では、株式の平均所有期間が1960年代には5年だったのが、最近は1年以下にまで短くなっている。わずか1年足らずで株式を手放す者たちが、果たしてほんとうにその会社の所有者といえるのだろうか。

落ち着きのない株主たちの気を引き留めるため、プロ経営者たちは配当や自社株買い(企業が自社の株を買って、株価を上昇させることで、株主が保有株の現金化で得することができるようにする手法)という形で、株主に利益のかなりの割合を還元している。過去20~30年のあいだに、米国と英国では、株主に還元される利益の割合が90~95%にまで高まった。

1980年代まで、その数字は50%以下だった。留保利益(つまり株主に還元されなかった利益)が企業による投資の主な元手になるので、この変化は企業が投資を行う力、とりわけ利益の回収に時間がかかる長期的な計画に投資する力を著しく弱めることになった。

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