地方の農業振興には人口減の覚悟が必要--『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』を書いた川島博之氏(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)に聞く

地方の農業振興には人口減の覚悟が必要--『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』を書いた川島博之氏(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)に聞く

日本の農業問題の原因はすべて「過剰生産=価格の低下」にあると“異説”を唱える。では、強い農業を育てるためにはどうすべきなのか。

──日本は食料を作りすぎているのですか。

過剰生産で価格が下落してしまう。それが農家を苦しめる。この現象は日本だけでなく、世界中で起きている。日本の農業が抱える問題を集約すればおおよそ三つ。年寄りが増えている、自給率が低い、高コスト体質。これを蒸し返しで何度も議論しているが、根本に立ち返れば、作りすぎを別々の角度から考えているのにほかならない。

この半世紀、食料に生産革命が起きた。単位面積当たりの収量は急速に上がり、食料が余りだした。農薬、肥料、機械はじめ技術が発達し、担い手も少なくて済むようになった。江戸時代なら100人の食料を作るのに85人がかかわる必要があったが、今や必要な数は一人か二人。

作りすぎれば、価格は下がる。価格が低下したら、数を売らないと儲からない。ところが、人が食べる量はほぼ一定だから数は増えず、農民が豊かになるためには、価格が上がっていかなければならない。だが、作りすぎが起きたために価格は上がらない。人口が減る社会だったら、売り上げはなおさら落ちる。

──21世紀は食料危機の時代といわれています。

それは、役人と学者が作り出した彼ら自身にとって都合のいい説だ。世界中で食料は余っている。食料は容易に作れ、過剰生産されているから、食料危機は起こらない。

農業はWTO(世界貿易機関)での紛争処理も多い。米国と欧州でも食料輸出が問題になる。余っているので輸出補助金を伴うダンピング競争に陥る。どこの国でもしばらく前までは国民の半分以上が農民だったので、伝統的に思い入れがあり、農民の苦難を放置できない。

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