地方の農業振興には人口減の覚悟が必要--『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』を書いた川島博之氏(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)に聞く

──規模拡大の成果ですか。

農業振興での村おこしを地方の首長がよく唱える。だが、食料生産の場としての地方は、農業の合理化、集中化を進めると、必然的に人口が減っていく。地方振興を進める人たちには望ましくない構図になる。

──それでも、強い農業を作るとすれば。

強い農業を作ることは、徹底した合理化を進めればできないことではない。コメは政治が長くかかわったので、1~2ヘクタールの兼業農家が多い。それを大規模化して、たとえば100ヘクタールを一人で済むようにすればいいが、それではますます人がいなくなる。経済法則を果敢に入れれば再生するとしても、人が地方からいなくなると覚悟する必要がある。

畜産はすでに合理化が進み、卵は優等生。コメ以外の自由化はできる。ほとんどの関係者が受け入れよう。土地問題も絡むコメは、当面はそっとしておいて時間で解決を図るのが現実的だ。米国も、日本が強いこだわりを持つコメ市場に入りこむ気はないだろう。

(聞き手・本誌:塚田紀史 撮影:引地信彦 =週刊東洋経済2011年9月17日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

かわしま・ひろゆき
1953年生まれ。東大大学院工学系研究科博士課程単位取得退学。東大生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現職。著者に『「食糧危機」をあおってはいけない』『農民国家 中国の限界』『「食料自給率」の罠』『食の歴史と日本人』。

『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』 日本経済新聞出版社 1575円 239ページ


  
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