地方の農業振興には人口減の覚悟が必要--『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』を書いた川島博之氏(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)に聞く

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──担い手自体が減っています。

日本でも多くの人が農村から都市に移っていく。食料の値段が下がって促進された。以前は1町歩の自作田を持っていれば、都市に出ていくより収入がよかった。農村から若者がいなくなり、それが続いた結果、老人しかいない限界集落化という現象を生み出した。

しかも都市に住んでいる人にとって、今や食べることに切実感がなくなった。ひもじいという苦しみを味わう日本人はまずいない。月3万円もあれば三食が十分食える。楽な生活ができるようになった。その対極にいる農民にとっては、いくら食料を作っても安くなってしまうことになる。

──老人だけの農業で大丈夫かと不安視されています。

農村に年寄りが残され、それで生産ができなくなったわけではない。現に65歳以上の高齢者でも楽に1億人分以上のコメが作れている。日本から農民がいなくなる心配はない。日本米を食べたい人はいるし、誰も一日だって食事を取らないわけにはいかないから、誰も作らなくなれば価格は暴騰する。ところが、その現象は起きていない。いくら担い手が減っていっても供給力は十分残る。

──食料自給率が問題と。

自給率問題は農林水産省のかなり意図的なキャンペーンで、マスコミも乗った部分がある。食料自給率をフード・セルフサフィシエンシー・レートという妙な英単語に訳すが、まず英語圏では通じない。もともとそんな概念がない。しかも、穀物自給率は一般的だが、食料自給率の中身は複雑で簡単には計算できない。農水官僚や農水に関連する人たちが自らの存在に関心を呼ぼうと考えて作った概念だ。

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