88.6%のリピーター率!あの女将がスゴい 業界慣習にとらわれない営業スタイルとは?
常連客の家族までもが思わず微笑んでしまうようなアプローチの数々。普通の旅館では考えられないようなこれらのアプローチが、宝生亭のリピーター獲得につながっているのだ。
なぜ麻衣さんはこのような営業手法にたどり着いたのか。その裏には彼女の「飾らない」ポリシーがあった。
「気に入らんかったらもう来んといて」
「年に10回以上泊まりに来てくださる常連さんもいらっしゃるのですが、ご希望の日にほかの宿泊客がいない場合は『1組だけのために電気つけるのもったいないからその日は来んといて』と正直に話して別の日にしてもらうこともあります」
こうなると「常連」ではなく、もはや「友達」に近い。一般レベルの女将と常連客とはまったく異なる独特の関係性を築いている。宿泊客がそこまで麻衣さんに引きつけられるのはなぜか。それは、彼女の「素」を出した営業スタイルに引き込まれてしまうからだ。
「最初からこんなスタイルでやっていたわけじゃないんですよ(笑)。オープン当時は、宿泊客全員に必ず満足して帰っていただこうと思って躍起になっていたんです。でも、頑張っても頑張っても、お客さまには怒られる。中には『他の旅館は○○してくれたのに、何でここではできないんだ』と文句を言うような方もいました。そのとき決めたんです、自分のことを好きになってくれる人だけを宝生亭の“お客さま”にしよう、と。それで、そのお客さまには『この宿が気に入らんかったらもう来んといて』と言いました」
こんなことを言って宿泊客と揉めないわけがない。しかし、不思議なことに揉めた宿泊客ほど、その後宝生亭に足繁く通う常連客になるのだという。
「私は我慢できない性格で、すぐに自分の言いたいことを言ってしまう。でもそんな私を理解してくれて好きになってくれる人もいる。嫌いな人はとことん嫌いかもしれないですけど(笑)。お行儀良く女将らしい女将を演じるより、私も楽だし、お客さまもそんな私を求めてくれる。『飾らないこと』が常連さんに好かれるコツ、ですかね」
旅館の女将としては明らかに“異端児”の麻衣さん。しかし、そんな彼女の、業界の慣習にとらわれない自由な営業スタイルが、彼女自身、そして、宝生亭の熱狂的リピーターを育て上げていた。
(取材・文/佐藤健太(編集部))
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