88.6%のリピーター率!あの女将がスゴい 業界慣習にとらわれない営業スタイルとは?
「意外ですけど、宴席では下座に社長や会長などの偉い方が座るケースも多いことがわかったんです。普通の女将と同じおもてなしをしていたら見逃していたかもしれません。下座に座られている重役の方とお話をして、『今度同窓会をやろうかと思っている』というような情報を引き出したところで、『ちょっと、ここに名前書いて』とコースターを渡します。そこに連絡先を書いてもらって、顧客名簿にするんです」
「宝生亭の常連さんは、主に半径50km以内にお住まいのお客さま、つまり、地元の方です。普通の旅館は認知度アップを狙い首都圏に広告を打ったり、団体旅行客の獲得のために宗教法人などにアプローチしますが、私たちはそれに競合しない道を選びました」
いくら北陸新幹線が開通して時間的距離が短縮されたといっても、東京から宝生亭まで片道3時間以上はかかる。そんなに時間を掛ける旅行客は旅行先の選択肢も多く、宝生亭のリピーターになってもらうにはハードルが高いのだ。
「だったら1時間以内の距離で来てくれた方に積極的に営業を掛けたほうが効率が良いんです。来ようと思い立った日にすぐ来ていただけますから。だから宣伝活動は地元の新聞に折り込みチラシを入れたりするくらいです」
常連になった客との関係構築にも、麻衣さんは余念がない。
「暑中見舞いや年賀状などの季節の挨拶状には、話題性のあるネタを使うようにしています。
東京オリンピックの開催が決まったときには滝川クリステルさんに扮した写真を、選挙の時期には選挙ポスターを模したデザインを使いました。
特に頻繁に泊まりに来られる常連さんには家族写真入りのお手紙を送ったり、私が出産したことをお知らせする手紙をお送りしたこともあります。また、空室が多くなる時期には、『来月はヒマです』と書いてしまうこともありますね」
そのほかにも、母の日には「いつも宝生亭に送り出してくれてありがとう」という意を込め、常連客の妻にカーネーションの花束を送ったり、誕生日にケーキを贈ったりもするという。