24年上期「映画興収TOP10」に感じる"先行き不安" 大作の数が乏しい一方で、期待高い作品も
一方、今年冬公開の米倉涼子主演『劇場版ドクターX』や木村拓哉主演『グランメゾン・パリ』を例として挙げながら、世の中的な話題性の高い人気ドラマは、時代を経ても変わらぬ爆発的な興行力があることにも大高氏は言及した。
そして、映画のヒットを支える若い世代の生活の大部分を、SNSやネット利用が占めていることを踏まえ、大高氏は「テレビをはじめマスメディアに触れる若い人がどんどん減っているため、量産されてきたドラマの映画化や、漫画や小説原作のメディアミックスからの映画化という邦画実写の基盤の形が、これから大きく変わっていくかもしれない」と指摘する。
洋画の苦戦は続いている
洋画の時流は今年も変わっていない。TOP10に『ウィッシュ』(36億円)と『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(23.7億円)の2作が入っているが、前者はディズニー100周年記念作であり、後者はいま旬の世界的スターが出演するハリウッド大作。ともに本来の期待値とはかけ離れた興行になった。
日本公開を巡って社会的な話題にもなった、原爆の父を描くクリストファー・ノーラン監督のハリウッド大作『オッペンハイマー』は17億〜18億円ほど。都会を中心に社会問題に関心のある若い世代が足を運んだが、センシティブなテーマ性のためか、幅広い一般層へは響かなかったようだ。
気になるのは、洋画ファンの年配層がどこまで動いたか。本作の興行からは、同層の動きが鈍かったことがうかがえる。『オッペンハイマー』は3時間という長尺がハードルになったことも考えられるが、映画そのものの鑑賞への行動変化が起きているとすれば、これからの洋画興行はこれまで以上に厳しくなっていくかもしれない。
洋画はいまやシリーズ大作の続編に対する観客の引きがない。若い世代を引きつける社会的時流や要素が生まれないまま時間が過ぎ去って、もはやその厳しさが当たり前になり、かつての洋画隆盛期のような未来は見えなくなっている。
大高氏は映画業界全体の課題として「いまシネコンは邦画も洋画も話題はアニメばかり。すでに少なくなっている映画ファンが観たい社会派映画や骨太な人間ドラマの作品がじり貧状態だ。そうなると、長く映画に関心を持ってきた人たちや、映画に幅広い価値を見出そうとする若い人たちも、劇場に行くのをやめてしまう。それはすごく大きな問題だ」と語る。この上半期の興行結果から、構造的な積年の問題への危機感はより高まりそうだ。
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