「Vision Pro」世界展開で改めて俯瞰するXR業界 生成AIとセットで進化する空間コンピューター

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これに対して青色の部分はOLEDパネルでVision Proのほか、クアルコム・サムスン電子・グーグル連合が作るプラットフォームでも、同様の技術が使われていく。

どのようにして、過去に立ち上げられなかったHMD市場でブレークスルーを作るかだが、Vision Proがアップルによって垂直統合されたプラットフォームとして強力にドライブされている一方、メタとクアルコム・サムスン電子・グーグル連合は水平分業による市場拡大を狙っている。

メタはQuest 3向けに開発しているOSを、その上で動作するアプリストアも含めて「Meta Horizon OS」として他社ハードウェアに開放する意向を示している。市場のど真ん中を狙うため、比較的カジュアルなゲームを中心に万能型の設計が行われている自社製品以外に、企業向けやハイエンドゲーマー向けなど幅広いユーザー層に向けた製品が登場することを期待しての措置だ。

すでにレノボ、ASUSといった企業が賛同しており、マイクロソフトもXboxブランドをライセンスし、Horizon OSが動作する製品を投入する見込みだ。これにより一層の対応ソフト増加が見込めるだろう。

一方、クアルコム・サムスン電子・グーグル連合も、2024年内に“空間コンピューター”を発表すると1月にラスベガスでアナウンスした。こちらはまだ詳細が見えないが、Vision Proに近いコンセプトのHMDを、オープンプラットフォームで実現するものだと考えられる。

iPhoneに対するAndroidスマートフォンと例えるとわかりやすいだろうか。

なぜ“空間コンピューター”に期待するのか

“Apple Vision Proは売れるのか? 買うべきなのか?”といった問いを、この半年ぐらい繰り返し尋ねられている。答える前に“何をもって売れた”というべきなのかを定義しなければ、意味のある議論にはならない。

たとえば“iPadほどではないがMacBook Proぐらいは売れる”といったところで、誰もが嘲笑のネタとするに違いない。メタがQuestシリーズで狙っているゲームやSNSを中心としたカジュアルなエンターテインメント端末とは異なり、Vision Proなどの空間コンピュータが狙う“新しいユーザーインターフェースへと刷新した次世代のパーソナルコンピューター”を描いていくには時間がかかると思っている。

アップルであれ、グーグルであれ、単独で新しいコンピュータの世界を描きり、その上で動くアプリケーションのアイディアを網羅的に提供することは不可能だ。方法はただ1つ。世界中のエンジニアやクリエイターを触発し、彼らに“新しい何かを作ってみたい”と思わせる基盤を作ることだ。

そのタイミングとして“現在”が適切かどうかは議論の分かれるところだろうが、様々なデジタルメディアが空間データ化しているトレンドの中では期待が持てると考えている。

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