「Vision Pro」世界展開で改めて俯瞰するXR業界 生成AIとセットで進化する空間コンピューター
一方で技術的なハードルを越えてくれば、AR/MRデバイスは増加してくる。
おそらくアップルはこうした将来を見越して、開発者やクリエイターに対してMRデバイスを磨き込んだ先にある“空間コンピューター”の世界をVision Proで見せたかったのではないだろうか。
筆者が個人的に購入した北米版のApple Vision Proは、最初のバージョンから1.2までアップデートが進んだが、基本的な機能やiOS/iPad OSなどとの整合性など、不足する要素が極めて多いものだった。ユーザーインターフェースも、簡単ではあるもののアプリ開発上は制約が多く、操作も不確実性を感じる部分があった。
先日の開発者向け会議「WWDC24」で発表したvisionOS 2では、内部の機能、ユーザーインターフェースともに大きな進化が認められるが、Apple IntelligenceをはじめとするAI機能の実装は遅れている。
おそらくVision Proが”完全体”となるのは、2025年秋以降に登場するだろうvisionOS 3になりそうだ。
メタがあきらめずに市場の活性化に挑んだ
そんな俯瞰動向ではあるが、それでもVision Proに関する話題やアップルのこのジャンルへの投資を馬鹿馬鹿しいと揶揄する声は大きい。しかし、懐疑的な意見が多いのも、過去を振り返ってみれば当然のことだ。
マイクロソフトは空間コンピューターを標榜した最初の製品「HoloLens」シリーズの開発を放棄。エンジニアの一部はメタに移籍している。
2016年から始まるPCVR(ゲーミングPCなどを用いたハイエンドHMDで HTC Viveシリーズなどが知られる)は、一部のゲームソフトが品質の高い体験を提供したが、システムが大規模で高価。一部のゲーマー、あるいはビジネス用途に留まっている。
メタはPCVRへの投資をやめて、コンピュータシステムを内蔵するOculus Goを開発し、それを洗練させ低価格化したQuest 2を2018年末に投入し、販売、対応ソフトの両面で継続的にマーケティングと開発支援の資金を投入した。
DSCCのデバイス出荷動向(予測を含む)グラフを見ると、2018年からQuest 2向けデバイスが大量に調達されていることがわかる(グラフ中の灰色の部分)。一説にはこの時期にメタが投入した資金は、日本円で1兆円とも言われているが、その後、出荷が沈静化していることも読み取れるだろう。
メタは諦めずにこの市場をさらに活性化させようとQuest 3を開発し、さらにQuest 2で得られたユーザー像や課題を分析した上で、継続的な投資をしていく。グラフの黄土色の部分がQuest 3で使われているLCDパネルだ(ただし他社も採用していく見込みのため、全数がメタという予測ではない)。
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