ワームホールやワープドライブの科学的可能性 タイムトラベルから見る「時間」とは?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その理由は、ワームホールが実在しそうだから……ではなく、一般相対論のように完全には理解し切れていない理論の場合、常識外れとも思える極端な状況を想定することで、理論の適用限界や新学説構築の手がかりが見えてくるからです。

たとえ実在しなくても、ワームホールの研究を通じて、停滞気味の理論物理学で突破口を見いだせるかもしれません。

もちろん、人類を遥かに超える超知性体が、思いもよらぬ方法でワームホールを建造することが決してないとは言えませんが……。

テレビドラマ『スタートレック』のワープドライブ

1960年代に放送が開始された懐かしのテレビドラマでありながら、いまだに多くのファンを魅了するのが、『スタートレック』です(日本では、『宇宙大作戦』というタイトルで放映されました)。

このドラマでは、宇宙船U.S.S.エンタープライズが宇宙狭しと飛び回る際、ワープドライブと呼ばれる超光速航法が頻繁に使われました。

「時間」はなぜ存在するのか 最新科学から迫る宇宙・時空の謎 (SB新書 656)
『「時間」はなぜ存在するのか 最新科学から迫る宇宙・時空の謎』(SB新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ドラマ内でワープのメカニズムが説明されることは、ほとんどありませんでした。どうやら、亜空間と呼ばれる特殊なフィールドを生み出し、その中で超光速に加速するという仕組みのようです。

まじめな物理学の議論に亜空間が登場することはまずありませんが、多少なりとも似たものとしては、ブレイン宇宙論に出てくる余剰次元があります。

これは、通常のほぼユークリッド的な3次元空間の外側に、別の次元が存在しており、われわれの見る3次元宇宙空間は、4次元宇宙空間内部に浮かぶ膜(ブレイン)のようなものだという考え方です。

残念ながら、ブレイン宇宙における物理的な相互作用を調べると、物質はほぼ完全に3次元空間に束縛され、外に出るのは不可能だと判明しました。

もちろん、余剰次元に移動して超光速航行することはできません。ブレイン宇宙論以外にも、通常の3次元空間とは別の空間が存在するという学説はありますが、そこを通ってワープできる可能性があると示したものは、今のところ見当たりません(できると面白いのですが)。

吉田 伸夫 理学博士

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

よしだ のぶお / Nobuo Yoshida

1956年、三重県生まれ。東京大学理学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。理学博士。専攻は素粒子論(量子色力学)。科学哲学や科学史をはじめ幅広い分野で研究を行っている。ホームページ「科学と技術の諸相」(http://scitech.raindrop.jp/)を運営。『明解量子重力理論入門』(講談社)『宇宙に「終わり」はあるのか』(講談社ブルーバックス)、『光の場、電子の海』(新潮選書)など著書多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事