DMG森精機のロシア子会社「強制収用」までの顛末 「戦争支援企業」を全否定、工作機械18台はどこへ
文中には、事実関係を調査する旨も記されていた。一方、NACPは同日、ホームページ上に続報を掲載。そこでは「(DMG森精機側が)2022年後半だけで、1600万ドル相当の商品とサービスをロシアで販売し、2023年の最初の3カ月でさらに200万ドルの利益を上げた」と述べられていた。
約1カ月後の10月25日、DMG森精機は「ロシアに関するステートメント」と題して、ロシア事業に関する調査結果を公表。ウクライナへの侵攻後、ロシアへ販売されたり、持ち込まれたりした機械は1台もないと改めて強調した。
それ以前から同国内にあった18台については、現地の拠点で厳重に管理されており、「第三者によるアクセスは不可能」と断言している。ただ、現地で生産された一部の機械については、以下のように流出を認めた。
「複数のDMG MORIロシア法人の従業員が、自己判断で、ロシア製の機械複数台をロシア国内の顧客に販売したことが判明しました。また、ロシアで製造された機械122台の殆どを購入し、ロシアの顧客に再販した会社3社を特定。(中略)納入したエンドユーザーはすべて民生用途です」
解雇後に行動を制御するのは不可能
現地法人はリストラをすでに実施しており、「解雇後に彼らの行動を制御することは不可能」とも指摘。「法令に違反した事実はないとはいえ、ロシア国内での販売はDMG MORIの厳格な方針に違反しております」と非難した。
そして2024年2月、ロシア政府は現地の製造子会社の株式を強制収用し、DMG森精機はこの事実と業績への影響を公表するに至った。2022年のロシア事業撤退から2年にわたり、混乱が続いたことが見て取れる。
こうした独裁国家による他国への侵略行為や経済活動への介入を、事前に予期するのは難しい。中国をはじめとして、海外で事業に取り組む際の地政学リスクは多くの日本企業にとって喫緊の課題だ。グローバル展開するトップメーカーとして、今回の経緯についてできる限り情報を開示し、教訓を社会に残してほしい。
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