朝ドラ「虎に翼」後半戦がますます面白くなる根拠 「パイオニアとしての成功物語」からどう変わる?

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あらためて振り返ると、前半戦で描かれてきた「困難を打ち破って女性初の弁護士、裁判官になる」というパイオニアとしてのサクセスストーリーは見応えがある一方、朝ドラとしては「骨太で堅い」という印象を持つ人も見られました。

どちらかというと朝ドラというより大河ドラマに近いシビアな世界観の物語でしたが、後半戦は寅子を通して少年少女や女性の人生にもスポットを当てる朝ドラらしい人情劇が描かれていくのではないでしょうか。

前半戦は当時の事情をベースにしていたとはいえ、男性を一方的に悪のように描かざるをえなかったところがあって、必ずしも男性層の評判は高くありませんでした。しかし後半戦が前述したように朝ドラらしい人情劇になれば、男性層の支持も得られそうなムードが漂いはじめています。

セカンドヒロイン・花江への支持

一方、寅子自身のエピソードとしては、子育ての苦闘が描かれるでしょう。ここまで娘・優未の子育ては、母・はる、義姉・花江、弟・直明(三山凌輝)など家族のサポートが受けられましたが、今後は激務や新潟への転勤、さらに反抗期などの困難が予想されるだけに波乱必至です。

さらにモデルの三淵さんは再婚し、相手には4人の連れ子がいました。『虎に翼』でその連れ子たちが登場するかはわかりませんが、もし忠実に再現されたら一気に5人の母になるだけに、その関係性は見どころの1つになるでしょう。

ここまで『虎に翼』の人気を支えてきた背景には、「パイオニアとして突き進む寅子の活躍だけでなく、さまざまな女性の心境を丁寧に描く」という脚本の妙がありました。

特に事実上の“セカンドヒロイン”と言える花江の存在は、主婦層の視聴者を置き去りにしない吉田恵里香さんの女性脚本家らしい配慮が感じられます。

実際ネット上には、外で生き生きと働く寅子を横目に、日々の家事育児に励みながらも悩みを抱える花江に、「気持ちがわかる」「心配になってしまう」などと感情移入するコメントが目立ちます。

はる、梅子、香淑、涼子らのエピソードも含め、彼女たちへの思い入れは放送が進むたびに増しているだけに、どんな結末になっても「ロス」の声が飛び交うのではないでしょうか。

直近の第13週では、「“愛のコンサート”の出演者は『ブギウギ』の主人公・福来スズ子(趣里)と見せかけておいて、茨田りつ子(菊地凛子)を登場させる」という離れ技で視聴者を驚かせるひと幕がありました。

「朝ドラのヒロインは他作のために安売りしない。でも、それに劣らぬインパクトのキャラクターを出演させる」という絶妙な脚本・演出を仕掛けられるスタッフなら、最後までさまざまな仕掛けで楽しませてくれるでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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