朝ドラ「虎に翼」後半戦がますます面白くなる根拠 「パイオニアとしての成功物語」からどう変わる?
失意と貧困の中、「すべての国民は法の下に平等」という日本国憲法を目にした寅子は、家族を養うために裁判官を志し、家庭裁判所の設立に尽力。6月17日放送の第56話で晴れて裁判官となり、作品は折り返し地点を迎える……ということは、これからの後半戦で、裁判官としての寅子、特に家庭裁判所での仕事に注力した姿が描かれることが確実視されています。
『虎に翼』は放送前から「『女性初の弁護士・裁判所長』となったパイオニアの物語」として紹介され、これまではその道のりを描き続けてきました。ただ実はそれ以上の見どころがあり、だからこそ重要な後半戦をたっぷり使って制作サイドが本当に描きたい物語を見せていくのでしょう。
逆に第9週の第41話から第45話では、東京大空襲や終戦、兄・夫・父の死と、絶望からの再起をわずか1週間で描きました。さらに寅子は第32話で弁護士になったものの、7話後の第39話で早くも断念。また、第35話で優三と結婚したものの、同じく7話後の第42話で死別してしまいました。
これらのスピーディーな展開は、「制作サイドが後半戦でたっぷり描きたい物語がある」ことの裏付けに見えるのです。
ではその本当に描きたいことは何なのか。それは、寅子が裁判官として慈悲深く子どもや女性を救っていくという物語でしょう。
(※下記、モデルとなった三淵嘉子さんの生涯に関する記述があります。『虎に翼』はオリジナルストーリーですが、ヒントになるような情報を避けたい人はご注意ください)
焦点は「子どもに向き合う寅子の姿」
弁護士だった頃の寅子は、断念せざるをえなかった盟友たちの思いや、女性の法曹界進出という大義を背負っていました。その後、弁護士の道を挫折したあと、出産・終戦を経て再び法の仕事を目指しましたが、動機は「貧困にあえぐ家族のため」。
奮闘が実って裁判官になり、生活がそれなりに安定したほか、家庭裁判所の仕事に携わったことで、寅子はつらい状況にさらされている子どもたちへの思いが強くなっていきます。
実は物語が折り返し地点に入る約1カ月前の第9週あたりから、その兆しが描かれていました。第41話で終戦後、疎開先から東京に戻った寅子は上野駅周辺でボロボロの姿で座り込み、大人に突き飛ばされる子どもたちに遭遇していたのです。
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