カニ山盛り「2時間1万2000円」ブッフェの破壊力 コロナ禍で怒涛の出店をした企業の正体

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2つ目は「日本人の味覚や嗜好に合わせてメニューを提供する」こと。孫社長が経営する店舗は本格的な「ガチ中華」が中心だが、本場のメニューをそのまま日本に持ち込むわけではない。例えば火鍋専門店「孫二娘潮汕牛肉火鍋」は、牛骨で煮込んだスープを使用。日本人の嗜好に合わせて辛さを抑え、素材の味をそのまま楽しめるようアレンジしている。

メニューは全店舗を統括する総料理長に一任しているが、新しいメニューを開発する際は必ず孫社長も立ち会い、自らの舌で確かめる。「日本人の口に合わない、と判断したら却下しています」。

3つ目は、原価を抑えて良質な食材を仕入れる「仕入れ力」だ。16ある店舗で共通する食材はできるだけまとめて大量発注。そのことで、取引業者に対する交渉力も持つことができる。冒頭の「銀座八芳」で、スーパーで買えば6000円はくだらないタラバガニを食べ放題で楽しめるのは、この「仕入れ力」あればこそだ。

もっとも足元では、外食産業は原材料や人件費の高騰、そして人手不足に襲われており、FANG DREAM COMPANYも例外ではない。

孫社長は「あまり値上げすると創業時から大切にしている『本格料理をリーズナブルな価格で』のコンセプトが崩れてしまう」と、価格転嫁には慎重な姿勢。総売り上げを伸ばす努力をしつつ、つねにバランスシートを見ながら人件費、賃料、仕入れ原価のバランスを調整しているという。

日本人の採用が難しい中での「施策」

人手不足で日本人をなかなか採用できない中、外国人を中心とするスタッフの戦力化も大きな課題だ。

「正直、人手不足で大変です。ただ、実はある社長さんに相談をしたら、『外国人を雇ってその人たちに徹底的にサービスを教え込んだらどうですか』と言われたんです。うちには日本人や中国人はもちろん、インドやミャンマーの方もいます。そうすると正直、サービスの質に不安がある。今の課題はどうしたら徹底したおもてなしができるかどうか。これについてはスタッフで毎日反省会をしています」

400席ある「銀座八芳」は連日予約でほぼ満席だという(撮影:梅谷 秀司)

一気に店舗数を増やしてきた孫社長。今後はどんな展望を描いているのか。

「今はいたずらに拡大路線を走らず、店舗ごとの品質をより高めていきたい」と堅実だ。今年8月には1号店の「GINZA芳園」をフカヒレ専門店にリニューアルしテコ入れを図る。一方でブッフェスタイルの「銀座八芳」は、好条件の物件があれば2号店のオープンを視野に入れる。地方や海外からも引き合いはあるが、自分が店舗に足を運べず、見られないという理由から断っている。

市場を徹底的にリサーチし、新たなアイデアとともに時に大胆に出店を仕掛ける。停滞感のある日本の外食市場に孫社長は新たな風を吹き込み続けられるだろうか。

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堀尾 大悟 ライター

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ほりお だいご / Daigo Horio

慶応大学卒。埼玉県庁、民間企業を経て2020年より会社員兼業ライターとして活動を開始。2023年に独立。「マネー現代」「NewsPicks」「新・公民連携最前線」などで執筆。ブックライターとしても活動。

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