わたしが30年あまり企業や学校で働いてきた中で、「また一緒に働けたらいいな」と感じているリーダーが2人います。思い返してみると、2人とも内向型で小さなことにも気づけるタイプの人でした。
ひとり目は、わたしが外資系飲料メーカーに勤めていたときの上司のMさん(男性)です。
わたしは入社早々、こう着状態に陥っているプロジェクトにリーダーとして加わることになりました。新しいタイプの自動販売機を日本で開発するプロジェクトでしたが、本社スタッフ、日本のスタッフ、共同開発をするメーカーとで意見が割れていました。
会議は、不協和音が鳴り響いているオーケストラの練習場みたいな様子でした。わたしは、業界のことも技術のことも社内のこともまったく知らない一番のど素人。
なぜそんなわたしが、リーダーになったかと言うと、「マーケティングがリーダー役を果たすべきだ」という考えがあってのことでした。
物静かであまり目立たない人が発揮した能力
初日から途方に暮れていたわたしは、Mさんに一緒に会議に参加してもらうことにしました。
Mさんは、物静かであまり目立たないタイプです。紛糾する会議中も、とくに意見は言わずに黙ってみんなの話を聞いていて、みんなが意見を言い終わると、それぞれの言い分や問題点などを整理してホワイトボードに書き始めました。
誰の肩を持つでもなく、中立的な態度で整理すると、メンバーも冷静さを取り戻すことができました。プロジェクトを成功させるというゴールは同じですから、Mさんのような冷静な聞き手がいることで、建設的な議論が戻ってきたのです。
わたしは、Mさんのような上司に会ったのは初めてのことで、今までと違うリーダーシップに驚きましたが、次からはMさんの方法を真似することにしました。そうして、少しずつ、リーダーの役割を果たせるようになっていったのです。
もちろん、それは「新入りの若輩者がリーダーなんてけしからん」などとは言わずに協力してくれたプロジェクトメンバーたちのおかげです。
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