自分自身のことを「ストーリー」にして語ろう アメリカ人は「語る」のも「聞く」のも大好き

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文化や人種の異なる人々で成り立つアメリカは、万人が共通の感情や理解を分かち合えるプラットフォームとしてのストーリーの力を必要としているのだろう。宣教師や政治家、学校の先生、親、ビジネスリーダーなど多くの人が、ありとあらゆるコミュニケーションの場面で「ストーリー」を駆使し、相手を鼓舞し、説得し、理解を得ようとする。

それでは、ストーリーとは何か。人を楽しませたり、興味を引いたりするように組み立てられたお話、とでも言えようか。ストーリーライン、プロット(筋書)があり、聞く人を引き込むように作られる点が単なる事実の羅列のような文と大きな違う。

StoryCorpが目指しているもの

冒頭のストーリーは、StoryCorpが集めた実話の1つ。筆者とStoryCorpの出会いは、9カ月ほど前のことだった。たまたまダウンタウンを歩いていた時、広場の真ん中に、プレハブのような小さな建物が立っており、StoryCorpという看板が掲げられていた。

説明書きには、「あなたのストーリーを語っていきませんか」とある。「どんな話でもいいから、何か話をしたい、という人は立ち寄って、自分の話をしていけ」というのである。何とも奇妙な取り組みだなあ、とその場は通り過ぎたが、存在はずっと心に刺さっていた。

その後、様々なメディアなどで、このStoryCorpが取り上げられ、高く評価されていることを知り、コンセプトに深い共感を覚えるようになった。StoryCorpの取り組みを一言で表現すると、「個人が持つかけがえのないストーリーを記録し、広め、後世に残していく」というものだ。

このプロジェクトを立ち上げたデイブ・アイセイさんはもともとラジオ番組の制作者。22歳の時、父親が同性愛者であることを知り、ショックを受けると一方で、その父が話してくれた、同性愛者の権利擁護運動の先駆けとなった暴動の話に興味をひかれた。暴動に関わった人たちを探し回り、インタビューをし、ドキュメンタリー番組を作っていく中で、歴史に埋もれた人々の隠されたストーリーの存在を知った。

その後15年間にわたり、市井の人々の生の声を追ううちに、名もなき人々が、インタビューを受け、スポットライトが当たった瞬間に、目を輝かせ、思いがけない話を語りだす姿に気づいた。そして、悟ったのが「すべての人間が伝えるべき価値のあるストーリーを持ち、そのストーリーを語り、聞いてもらう権利を持っている」ことだった。

そこで、多くの人に「インタビュー」という手段でスポットライトをあて、ストーリーを引き出し、集めることを考え付いた。誰もが気軽に立ち寄って話ができるよう、ニューヨークのグランドセントラル駅にブースを作ったのは11年前のこと。StoryCorpのユニークな点は、インタビューは親子や夫婦などの2人組で行われ、どちらかがインタビュアーに回り、もう一人に話を聞くという形をとることだ。StoryCorp側からファシリテーターというサポート役の人も立ち会うが、基本は1対1のインタビュー形式で行われる。

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